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恋煩い日記

2012年は毎日何かを書こう、という目標のもといろいろな創作をするブログになりました。

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霧島くんと音羽くんがドラマの役作りをしたりする話

おまキャス2が大好きで大好きで。
ドラマ始まる前にこんな会話をしてたらいいなあと言うお話。

過去の話は私の捏造設定ですもちろん。







(役作りが苦手な霧島くんと、セリフ覚えが苦手な音羽くん)



 自室で一人台本を読んでいた霧島は、無意識で左手が耳たぶに触れているのに気がついてその端正な眉をしかめた。

「司さん、よくピアスを触ってるよね」

 自分でも気が付いていなかったその癖は、三日と開けずに通っているレストランの女性オーナーに指摘されてから意識するようになった。なにか考え事や気になることがあるとそこに触れてしまうらしい。特に意味も効果もない。しかし、『霧島司』の癖であるそれが抜けていないということは、まだ台本の内容と役が体に入ってきていない証拠のように思える。

 台本は、少し前に行われた企画『おまかせ! キャスティング第二弾』の結果を受けて作られたもので、霧島にあてがわれたのは「新進気鋭のキャリア組No1」刑事、霧谷秀一役であった。
 そのため、台本を受け取った当日から霧島は刑事の役作りを開始していたのだが、これが思うように進まない。上手くいかないと考えこめば、また先ほどのように無意識の癖が出てしまい、更に袋小路に迷い込むような気持ちになってしまう。
『おまかせ! キャスティング』はファンの投票によって役が変わる。逆に言えば、ファンたちは霧島の刑事が見たいと思ってくれているのだ。投票企画はかなり盛り上がったと聞いている。わざわざ投票してくれたファンの期待を裏切ることのないよう、ファンの望む刑事霧谷を見せたい。自分に厳しくストイックでなければ成長はないと霧島は信じていた。

 それでも、行き詰まっている感は否めない。少し台本から離れてみようと、霧島は机に台本を伏せ、テレビのリモコンを手に取った。
 参考のために事務所から借りてきた刑事もののドラマや映画のDVDがテレビの前には山積みに積まれている。その一つをまた見てみようとまだ見ていない山の一枚を手に取ったところで、インターフォンが軽い音をたてた。

『やっほ~。霧島くん一緒に本読みやろう~』

 ドアホンの向こうで手を振っていたのは音羽慎之介だった。


**


 音羽は演技の役作りには苦労しない方だ。「普段から演技してるようなものだからね」とこともなげに言うが、憑依型役者とでもいうのだろう、板に上がったりカメラが回ったりし始めると自然と役に入り込むことができた。
 だから、霧島に「役作りに苦労している」となにかコツを聞かれて、少し不思議な顔をして答えた。

「うーん。そう言われても。今度はこういう役をやればいいんだなって思ったらなんとなく自然に分かるから。ごめんね役に立たなくて」
「いや、謝ることじゃない。しかし少し羨ましいな、シンには演技の才能があるのかもしれないな」
「才能っていうか……慣れてるだけだよ。ずっと、演技してたみたいなものだからね」

 音羽はいつものように笑いながら言う。
 霧島も詳しく聞いたことはないが、音羽が小さなころからいろいろと苦労して育ってきたらしいことは想像だけでも分かる。音羽は空気が読めない不思議系キャラに見えて、意外と本心を隠して相手の望むように行動するのが上手い。

「いや、得意ならその方面の仕事を増やしてみるのもいいだろう。検討しよう」
「待って、僕台詞暗記するの苦手だからちょっと待って」
「フフ、それくらい苦労するといい」
「うえ、霧島くん意地悪」

 露骨に顔をしかめて見せる音羽にほんの少し笑顔を見せ、霧島はまだ再生していなかったDVDの再生ボタンを押した。
 音羽は興味深そうに、DVDの山を眺めている。

「すごいね、踊るやつとか、特命のやつとか、はぐれるのとか科捜研のとかいっぱいある。……これは? 太陽に吠えるの?」
「少し前の作品だが、刑事ものと言えばそれと言う年代も多いと聞くぞ」
「へぇ」

 DVDの再生が始まり、霧島はそれに集中し始めた。音羽はその横で、台本を読み始める。
 音羽は役に入るのは早いが、台詞を入れるのが苦手だった。変に役を掴むのが得意なだけに、決められた台本通りに台詞を喋ることができずに自分流のアレンジを加えてしまい、NGを出すことが多いのだ。舞台ではそれがうまい方向に行くこともあるが、テレビドラマではそうもいかない。

「うーん。スイーツ警部は基本敬語だから難しそうだなー。その点、霧谷警視はいいね? 普段の霧島くんとあまり変わらなさそう」
「そうでもないぞ。やはり刑事という職業は普段使わない言葉遣いが多いな」
「うん。あっ。でも、今回は霧島くんと一緒のシーンが多いからちょっと心強いな」
「ん?」

 霧島が音羽のほうを見ると、音羽は台本に目を落としながら、こともなげに続ける。

「ほら、トオルくんとかカイトと一緒のシーンでNGだすと、あの二人結構怒るから」
「そうなのか?」
「そうだよ。怒るっていうか、言い方キツイからさ」
「まあ、あの二人はそうだな」

 悪気はないがいい方がきつくなってしまう辻魁斗と、X.I.P.らしく煽り炎上が持ち味の神崎透の顔を思い出す。今回あの二人は同級生の高校生コンビという役柄で、一緒のシーンが多かったはずだ。喧嘩にならなければいいが、と霧島は少し不安を感じる。

「そういえばさ、前に霧島くんがこうやって僕にDVD見せてくれたことあったよね」
「ああ、王子様の資料か」
「うん、懐かしいなあ」



**


 王子様ってどういうひとのことだかわからない、と音羽慎之介は言った。
 この寮に入るまで、その日の居場所にも困るような暮らしをしてきたらしい。霧島司には想像もできないが、慎之介はこともなげに言った。

「泊めてくれる人とか、お金をくれる人とか、結構いっぱいいるよ。そういう人に会えたらその日はラッキーだったなあ」

 宿泊代の見返りに、慎之介が何をしていたのか、司はあえて聞かないようにしていた。
 いつからそんな暮らしをしていたのか、そもそもどういう教育を受けていたのか、慎之介には基本的な生活をするための知識が著しく欠如していた。たとえばゴミの分別の仕方だったり、またたとえば図書館で本を借りる方法だったり、また、電車の切符を買う方法であったり。
 それなのに、いわゆる礼儀作法やマナーだけは完ぺきにこなしたりすることがあるので、司は戸惑いを隠せないでいる。それは例えば食事をする前に頂きますと手を合わせたり、玄関で靴を脱いだあとそれの向きを揃えて直したり、または目上の人に向かって見せる完璧な尊敬語と謙譲語の使い分けであったり。
 そして今の発言だ。「童話とかに出てくるだろう、お姫様を助けてハッピーエンドにする王子様だ」と司は言ったが、慎之介は全く表情を変えずにただ首をかしげるだけだった。

「見たことがないのか?」

 司はとても代表的なお姫様と王子様の物語をいくつか口にしたが、慎之介はどれも見たことがないと言った。

「もしかしたら、どっかで見たかもしれないけど、覚えてないなあ」
「そうか。では、今夜は観賞会だな」
「えっ」
「事務所にいろいろDVDがそろっている。そのあたりなら定番だからきっとあるだろう。借りてこよう」
「えっ。霧島くんちょっと待って」

 さっそく上着を羽織り司は立ち上がる。王子様と言うならあれとあれと、あれも必要だな。頭の中にリストを並べていく。
 慎之介が慌てた様子で後からついてきた。

「ねえ、観賞会ってまた?」

 また、とは事務所に正式に所属したすぐ後に『アイドルとは』というテーマで行ったDVDの観賞会のことを指しているのだろう。あのときはついあれもこれもと続けて見た結果、徹夜を超えて昼までかかってしまった。
 今回はそんなことのないよう、途中で休憩を挟もうと司はスケジュールまで既に頭の中に組み立てていた。

「ああ。俺も復習のために一緒に見よう」
「ん~。もう。じゃあ、夜食にスイーツ買ってもいい?」
「仕方ないな、ほどほどにな」
「やったー」
 
 寮から事務所まではすぐだ。帰りはコンビニに寄って帰ろう。二人は夜食と飲み物についてあれやこれやと話しながら歩いた。



**



「僕、ちゃんと王子様出来てるかな? 霧島くんの思うようにできてる?」
「ああ、上出来だ。あのころに比べたらな」
「ふふ、嬉しいな」

 台本を持ったままの音羽は軽く微笑む。その顔は、あの頃霧島が抱いていた理想の王子様そのものだ。

「俺も負けていられないな。霧谷警視の役を早くつかめるように努力しよう」
「霧島くんと読み合わせするの楽しみだなあ」
「俺が役をつかむまでに、台詞は覚えておけよ?」
「うーん、できるだけ頑張る」

 今回のドラマは音羽もやる気で取り組んでいる。6人一緒で出演というのがよほどうれしいらしい。今の時点では一歩先に行っている音羽に負けられないな、と霧島も思いを新たにした。
 また左手が耳たぶに向かおうとしているのに気がつき、霧島はその手でピアスを外した。これがなければ、『霧島司』から離れられるかもしれないと思う。

「ピアス、外すの?」
「警視庁の刑事がピアスはないだろう。もともと撮影に入ったら外すつもりだったんだが、今からそうしておけば気持ちもはいるかと思ってな」
「……なんか、新鮮だね」
「そうか?」

 流しっぱなしになっていたDVDはドラマの第1話が終わろうとしていた。

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