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恋煩い日記

2012年は毎日何かを書こう、という目標のもといろいろな創作をするブログになりました。

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センター欠乏症

10/7(火) 現在定期メンテナンス中。
メンテが明けたら、センター争奪戦の結果が出る予定です。ドキドキしながら。


音羽主です。センター戦発表を待ちながら。








「慎之介さん、大丈夫……?」
「ん? 何が?」
「注文いただいたから、作って待っていたけどまさか一人とは思わなかったよ。食べ切れるの?」
「問題ないよ」

 ランチサービス終了後の休憩中な彼女に、「今から行くから作って待っていて」と電話をしたのは僕だ。注文のメニューは伝えたけれど、一人で行くとも誰かと行くとも言っていない。
 僕の座るテーブルの上には、さっき電話で注文したメニューができたての状態で乗せられている。
 ドーナツに、スーパージャンボパフェ、フレンチクルーラーにみたらし団子、桃饅頭、タピオカ入りココナッツミルク。他にも、思いつく限りの甘いものをたくさん。見ているだけでも幸せな気持ちになってくる。

「美味しそう。いただきます」
「はい、召し上がれ」

 休憩中の彼女には無理言って一緒にテーブルについてもらった。食べてもいいよ、と言ったけど「さっき賄いのお昼食べちゃったから」との返事。ちょっと残念。
 まずは目の前にあるドーナツを手に取る。揚げたてみたいでまだほんのり温かい。
 ぱくり、と口に入れるとサクッとした歯ごたえ。少しだけじゅわっと揚げ油の感覚がして、口の中に甘くて幸せな気持ちが広がっていく。

「うーん、美味しい!」
「ふふっ、よかった。ちょっと心配していたんだ」
「えっ、なにが?」
「ほら。センター争奪戦の所信表明で。甘いものが美味しくないって言っていたでしょ?」
「ああ、あれね」

 親指についたドーナツの油をぺろり、と舐める。霧島くんに見られたら行儀が悪い、と怒られるだろうな。僕はドーナツのとなりにあったバニラパフェに手を伸ばす。

「センター争奪戦の投票期間も終わったから、甘いもの解禁なんだ。それに、このお店のスイーツはいつだっておいしい。美味しくないなんて思ったことないよ」
「そうなの? じゃあ、なんであんなこと……」
「ああやって言えば、みんな僕にいっぱい投票してくれるかなーって。……ああ、嘘じゃないよ? ここの以外の甘いものが美味しくないなって思ったのは本当だし」

 慎之介さんって、意外と策士だよね、と彼女は言ったけれど、僕は「ん?」と聞かないふりをしておいた。僕がサクシだなんてそんな。誰でも思いつきそうな簡単な作戦だと思うけど。そう言えばトオルくんには「またアザトイ作戦やってんなー、音羽くん」とは言われた。
 僕はバニラパフェの奥に置いてあったホットケーキの皿を引き寄せた。空になったバニラパフェの器を、彼女がそっと脇へ避けてくれる。

「そう言えば。君は投票してくれた?」
「え? うん。仕事の合間だから、ほんのちょっとだけどね」
「もちろん僕にだよね?」
「うん。当たり前だよ。でも、ときめきchに出ていた上位の人たち、本当にすごいね。私の票なんて本当にほんのちょっとだよ」
「たくさん投票してくれる人は本当にうれしい。みんなのためにも頑張ろうっていう気持ちになるしね」

 投票数の多いファンの子には、何か特典があるんだって。ネットには速報が流れていて、伊達くんなんかはいつもそれをチェックしてた。「上位の票数だけじゃ大勢は決まらねえ。大事なのはレディースみんなの気持ちだからな」って、言ってた。僕もその通りだと思う。1000票をくれる子も、1票をくれる子も、僕をセンターにしたい、って思ってくれている気持はおんなじだ。
 でも。僕は目の前に座っている彼女を見つめる。彼女がどのくらい票を入れてくれたのかはわからないけど、他の誰でもなく、僕を選んでくれた、その気持ちが本当にうれしい。
 どうやったらこの気持ち、伝わるだろう。

「結果が出ないことには、まだ何も言えないけれどね。前回、隊長に逆転されちゃったの、本当は結構悔しかったんだ」
「そうなんだ。……うん。今度は勝てているといいね」
「うん。センターになった僕、きっとすごくカッコいいよ♡」
「ふふ!」

 ホットケーキを食べ終わり、紅茶を口にする。まだまだ甘いものはなくならない。次は桜餅にした。
 不破くんが見たらきっと倒れちゃうだろうな、こんな光景。僕は想像して少し笑った。不破くんの「肉は喰ってきた」っていう選挙ポスター、カッコよかったけどちょっと面白かった。

「でも、甘いもの断ちするのは辛かったし、少し悲しい気分になったからもうやらない」
「本当、みんな心配するからやめてね」
「はは。君に心配してもらえるならいいかも」
「もう! ダメだからね!」
「分かった分かった。 ごめん、紅茶のおかわり、くれる?」
「はい。少々お待ち下さいね~」

 彼女は席を立ってキッチンに向かう。僕はそれを見送りながら、心配症と言えば魁斗のことを思い出す。あの所信表明インタビューが公表されたときに、真っ先に電話してきたのが魁斗だった。
「シンくん、病気とかじゃないだろうな!?」って必死な声で。
「大丈夫だよ~、今もバニラアイス食べてる」って嘘ついたら簡単に信じちゃったけど。ああいう純粋でまっすぐなとこに、みんな惹かれるんだろうなあ。

「お待たせしました」
「ありがとう」

 僕が次の料理に手を伸ばそうとしたとき。
 僕と彼女の携帯が同時に着信音を鳴らし、僕らは顔を見合わせた。

 センター争奪戦、結果発表だ……!


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