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恋煩い日記

2012年は毎日何かを書こう、という目標のもといろいろな創作をするブログになりました。

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ウェディング妄想


アイドルイメージのカラードレスを選ぼう、なんてツイッターの企画をやっていてですね、私はやっぱり妄想を広げちゃうんですよ。

今回は京也さん。
思いっきり結婚前提の伊達主です。ご注意。

あと、私自身未婚で身近に結婚式前後のあれこれを経験したことがないので、いろいろの描写は雰囲気重視です。こんなことしねーよ、と言うようなことを書いてるでしょうけどもご容赦ください







(俺だけの)


 ドレスが届いた、と連絡をすると、京也さんはその日のうちにやってきた。部屋の隅に置いてある箱を見て、「着て見せて?」とウィンクしながらおねだりしてくる。

「ダメだよ、箱から出したら、しわになったり汚れたりしちゃう」
「大丈夫だって。お前がそれ着てるところ見たい」
「だめだってば。我慢して」
「悪い子ちゃん、頼むよ? なあ」

 ……そう言われると、本当に弱い。
 ちゃんとした下着とかもないし、着つけも自分でやるから絶対に本番みたいにきれいじゃないからね、と何度も何度も念を押して、私は結局京也さんに根負けしてしまった。

(……ん~。でも、このドレス本当に可愛くって、式の本番にだけ着るのは勿体ないと思ってたんだよね……)

 内心、京也さんにドレスを見てもらうのが少し嬉しいのはナイショだ。そんなこと言ったら調子に乗るに決まっている。



「お待たせしました……」

 スカートの裾を踏まないように気にしながら、京也さんの待っている部屋へ入る。
 ソファに座っていた京也さんは「待ってました!」といつもの調子で言いながらこっちをみて、そして真顔になった。

「……?」

 あれ……? も、もしかして、私このドレス似合ってない?
 ドレスを決めるときは、ブライダルサロンにいって、本当に何十着も試着して、何枚も何枚も写真を撮って二人とも疲れ果てていたし……結局、試着したにもかかわらず京也さんは「もういい。俺がデザインするからオーダーでつくろう」とか言い出してしまうし……。オーダーの相談に行った時もすごく大変だったし、そういう状態で決めたから、判断力が鈍っていたのかもしれない。だから、なんとなく似合うと思っちゃったのかも。
 京也さんの表情に、少し不安になってくる。それとも、私今ほとんどノーメイクだし、イメージと違ってるのかも……!

 私がグルグルと考えを巡らせていると、京也さんはようやく立ち上がった。

「……イイね」

 その一言に、胸につっかえていた重い塊みたいなものがすうっとほどけていくのが分かる。
 そしてその代わりに、あったかくて甘くてふわふわした、幸せなかたまりが入ってくる。

「あ、ありがとう」

 やっと、それだけを返す。
 私の目の前に立った京也さんを見上げるようにすると、彼はそのキラキラした琥珀色の目を真っ直ぐに私に向けていた。

「……」
「……えっと。……あの。どうでしょう……?」
「ごめん、言葉になんねえな。お前、可愛すぎて」
「え、えへへへ、ありがとう……」

 なんだか恥ずかしくなってしまって、私はテレ隠しに薄く笑ってしまう。だけど、京也さんの顔は真剣そのもので、私の薄笑いもすぐに引っ込んでしまった。

「なぁ」
「なあに?」
「約束して」
「ん? なにを?」

 京也さんの両手が、私の両肩に触れる。そこはドレスの生地がなくて、素肌にふれる手から京也さんの熱い体温が伝わってくる。

「約束して。 今日からずっと、俺だけのものになるって。俺だけを見て。俺だけを好きになって」

 あつい、熱い言葉に胸がじんじんする。さっき入ってきた幸せのかたまりが体中の隅々にまで行きわたって、もう他の隙間なんかないくらいに埋め尽くされていくのがわかる。
 私は言葉にならなくて、こくん、とただ頷く。

「サンキュ。愛してる」

 ぎゅっ、と。
 これまでに経験がないんじゃないかってくらいに強く抱きしめられて、私は一瞬呼吸を忘れる。
 目のすぐ横に京也さんのさらさらとした金色の髪が見えて、目がチカチカした。

「き、京也さん、苦しい」

 広い背中に手をまわして、ポンポンと叩く。
 でも、京也さんは私の声が聞こえてないみたいに、抱きしめる力を緩めてはくれなかった。

「ごめん。無理。我慢して」
「で、でも」
「なんだよ」
「ドレス、しわになっちゃう」
「構わねえだろ、そんなもの」

 私が言ったことを全部否定して、少しかすれたような声で京也さんはますます力を込めてきた。
 ……いつもと違う。

(今まで京也さんが私のことこんなふうにしたことなかった)

 いつも、気を使ってくれたし優しく丁寧に扱ってくれた。ちょっとでも私が嫌だって言えばすぐにやめてくれたし、そもそも私が嫌がることなんかほとんどしたことがなかった。
 ぎゅうぎゅうと私を抱きしめる京也さんは、そんないつもの優しい紳士ではなかったけれど、でも。

「俺も離さない。お前だけを見るよ、一生」

 耳元でそう言ってくれたから。だから私はこれからもずっと京也さんについて行こうって。この人と一緒に歩いて行こうって。
 そう決めた。




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