恋煩い日記
2012年は毎日何かを書こう、という目標のもといろいろな創作をするブログになりました。
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レス子の告白
(注意)完全なる音羽レス子の妄想捏造作品なので、こんな展開おかしい!とか音羽とレス子がくっつくなんて認めない!と言う方は閲覧をお控えください。
(注意2)『夏祭りのメモリーズ』音羽シナリオの会話を含めたバレがあります。
ツイッターのフォロワーさんとお話をしていて、レス子が音羽くんの気持ちを受け入れるときはどんな言葉で言うんだろう、そのとき、音羽くんはどんな顔をするんだろう?
そんな疑問から生じたお話です。
このほかにも、いろんなパターンが思い浮かんでしまったのですが、音羽レス子だったら、ここを外して欲しくないな、と思えたこの話を膨らませて書いてみました。
上手いことできていればいいのですけど……。
(注意2)『夏祭りのメモリーズ』音羽シナリオの会話を含めたバレがあります。
ツイッターのフォロワーさんとお話をしていて、レス子が音羽くんの気持ちを受け入れるときはどんな言葉で言うんだろう、そのとき、音羽くんはどんな顔をするんだろう?
そんな疑問から生じたお話です。
このほかにも、いろんなパターンが思い浮かんでしまったのですが、音羽レス子だったら、ここを外して欲しくないな、と思えたこの話を膨らませて書いてみました。
上手いことできていればいいのですけど……。
(いいもの、あげる♪)
『慎之介さん。忙しいのにごめんなさい、いつもお疲れ様です。 急にこんなことを言ってしまって、迷惑だと思うんだけど、今度、いつお店に来られますか? 少しだけでいいんですけど、もし、お店に来られる時間があったら、先に連絡をください』
(……?)
音羽慎之介は、自分のスマフォを見つめたまま、たっぷり数十秒は考えこんだ。
後ろを通りがかった辻魁斗が思わず「シンくん、なに固まってんだよ。へんなメールでも来た?」と尋ねるくらいには、固まっていた。
「ん? うーん……。なんでもない♪」
音羽はスマフォの画面を切って、それをズボンのポケットに戻した。
「ねえカイト。これからの予定って……」
「また? さっき確認しただろ。これから写真撮影。それからもう一誌の方のインタビューと写真撮影。今日は深夜までかかる予定。以上」
「そうだったね」
音羽の脳裏に彼女の顔が浮かぶ。そう言えば、いつから言ってないだろう。今回は食事をしながらの撮影だし、そうなると出前を取るというわけにもいかない。
(あとで霧島くんにお願いしてみよう)
今は打ち合わせに行っている、リーダーの攻略方法について考える。どうすれば、少しの間解放してくれるだろうか。
「シンくんー! いくよー。あ、あとさっきケータイポッケに入れてたけど、ちゃんとおいてけよな。また霧島くんに怒られるぞ」
「あっ。うん。分かった」
魁斗に呼ばれ、音羽は立ち上がる。ズボンに入れたスマフォは急いで机の上のカバンにしまった。
****
「きたよー」
「慎之介さん、いらっしゃいませ。お待ちしてました」
「うん。ありがとう」
結局、彼女がメールを打ってから、音羽が店を訪れることができたのはその5日後だった。
閉店間際の、ほとんど深夜と言うような時間。客はみんな帰っており、店の中には彼女と音羽の二人だけだった。
「マスターは?」
「今日は上がりました。明日、早番をやってくれるから」
「そう。ええと、遅くなっちゃってごめんね」
「いいえ。来てくれただけで、いいんです。なにか食べますか?」
「そうだなぁ。久しぶりだし。紅茶と、ホットケーキ」
「はい。かしこまりました」
音羽は、客のいないレストランのカウンター席に座った。ここなら、キッチンの中にいる彼女の姿も見える。
わざわざ呼びだしたというのに、彼女は努めていつも通りにしようとしている。けれど、笑顔の裏で彼女が緊張しているのが音羽には分かった。音羽は、他人の顔色をうかがうのが得意だった。
(カイトも、最初のころはあんな感じで緊張してるの隠そうとしてたっけ。でも、カイトの場合は表情が硬いからすぐわかるけどね)
その点、彼女のほうが手ごわいなあ。と音羽は彼女の後姿を見ながら思った。
「お待たせいたしました。ホットケーキと、紅茶です」
「ありがとう。ねえ、よかったらそこに座って」
「いいんですか?」
「うん。久しぶりだから。少しでも君のそばにいたいな」
「ふふ。慎之介さん、相変わらず」
彼女は、音羽の隣のイスに座った。まだ、いつものコックコート姿のままで、エプロンも外していなかった。
音羽は頂きます、と小さく宣言してから、ナイフとフォークを器用に使い、大胆にホットケーキを征服しにかかる。
「それ、食べたら、慎之介さんに渡したいものがあるので、お腹に余力、残しておいてくださいね」
「ん? なになに? いいもの、くれるの?」
「うーん……、どうでしょう。ヒミツ? かな?」
「……残念。でも、食べたらすぐ見られるんだよね。なんだろう」
ものの数分で、ホットケーキと紅茶はすべて音羽の腹の中におさまっていた。ごちそうさま、とつぶやく音羽に、お粗末さまでした、と彼女が応える。
「じゃあ、待っててくださいね。いま、持ってきます」
「うん」
彼女は立ち上がり、また厨房の奥へ消えて行った。
その姿を音羽はじっと視線で追い続ける。隣にいてもずっと、彼女が緊張しているのを感じていた。会話がぎこちないことや、表情が硬いままなことで、嫌でも分かる。
彼女があんなメールを送ってきたこと自体、出会ってからはじめてのことだった。なにか、あまりよくない変化が訪れるのではないだろうかという予感を、音羽は感じていた。
(誰か好きな人ができたとか、彼氏ができたとかだったらどうしたらいいかな)
どうやって彼女の心を自分に引き戻すか、それができなければ自分はこれからどう生きるべきなのか、というところにまで音羽の考えが及んだころ、ようやく彼女が戻ってきた。
「おまたせしました」
彼女が持ってきたのは、バスケットいっぱいのクッキーだった。
「あ。クッキー」
「はい。これ、慎之介さんに受けとってほしくて」
音羽の横に立った彼女は、その両手ほどの大きさのバスケットを音羽に差し出した。
彼女の意図することが良く分からず、音羽はそのバスケットと、あまりにも真剣な様子の彼女の顔を交互に見た。
「ええと……。とりあえず、座って?」
「はい」
「それから、それはここに置いて?」
「はい」
音羽に指示された通り、彼女はまた音羽の隣のイスに座り、持っていたバスケットをカウンターテーブルの上に置いた。
その中身を、改めて音羽は覗き込む。
「そういえば、ここのメニューにクッキーはなかったよね。クリスマスのジンジャーブレッドマン以外は」
「うん。そうですね」
「じゃあ、これは、新メニューの試作? とかかな?」
「ううん。これは慎之介さん専用で、慎之介さんにしか出さないの」
「そうなの。僕専用かあ。嬉しいなあ」
緊張からか、今にも泣き出しそうな様子の彼女を見かねて、音羽は彼女の手をそっと握った。大丈夫。心配することはないよ。そう気持ちを込めて。
音羽の大好きな料理たちを生み出す、大好きな女の子の手は今は少し冷たかったけれど、自分の手よりも随分と小さくて、音羽の手の中にほとんど収まってしまった。
「でも、どうして僕専用? なにかの記念日でもあったっけ?」
誕生日でもないし、デビュー記念日でもないし。
そんなふうに呟きながら、ふと。
バスケットの中のクッキーがすべてハート形をしていることに音羽は気がついた。
「…………一年、たちます」
「ん? なにが?」
「慎之介さんに、ハートを頂いてから。もう一年たちました」
そう言えば、そんなこともあったな、と音羽は思い出す。
去年の夏だった。花火大会が近所で開かれていると聞いて、彼女を誘って夜、出掛けたのだった。
彼女と出会って。音羽はたくさんの幸せがあることを知った。毎日、彼女と会うことを楽しみにしている自分に気がついた。人を好きになること、その幸せをくれた彼女に、お返しがしたい。だからその日、花火でハートを描いて彼女にプレゼントした。「僕の心をあげる」そう言って。
「あの時、わたしは慎之介さんに自分のハートをあげられなかった。慎之介さんは無理やりとったりしないと言ってくれた。わたしのハートはわたしのものだって、言ってくれた。でも、それからずっと、わたしは慎之介さんに酷いことばかりしてきたと思います」
「そんなことないよ。君との思い出は、楽しいことばかりだし、幸せなことしかないよ」
音羽は本心からそう言った。
確かに、彼女のことが好きだし、彼女にも、自分のことを好きになってほしいと思っている。
けれど、そうならないのは自分に足りないものがあるからだ、と音羽は分かっている。これも、彼女に教えてもらったことのひとつだった。
悲しそうに震える彼女の瞳から涙がこぼれないようにと、音羽は願った。彼女を泣かせたくなんかない。彼女の手を握る力を強めた。
「わたしはずっと慎之介さんから頂くばかりで、慎之介さんの望むものを渡してあげることができなかった。わたしが、弱虫だったからです。怖かったんです。それに、今日だって。追い詰められなければ、こうして行動することもできなかった。全部、わたしの心が弱かったから」
「うん」
「だから、これがわたしのハートです」
彼女の顔がこちらを向いて、音羽の視線と向き合った。
泣きそうだ、と思っていたけれど、涙にぬれた彼女の瞳はとても美しくて、キスしたい、と音羽は思った。
音羽がそんな欲望にかられている間に、彼女はバスケットの中のクッキーを一つ、指でつまんで音羽の掌におとした。
「これが、花火大会のとき。これは、ハロウィン。これは、クリスマス。お正月、バレンタイン、ホワイトデー……」
いいながら、一枚、一枚と彼女はクッキーを音羽に手渡してくる。あっという間に、片手では収まりきれなくなり、音羽は両手を差し出す。それでも彼女は手を止めない。
「お誕生日、ガーデンパーティー、スカイラウンジのとき、沖縄……。たくさん、たくさん、慎之介さんから頂いていた分。全部同じだけ、私からもハートをあげます」
どうしよう、と音羽は思った。
ここへ来るのに、かなりギリギリのスケジュールを霧島に調整してもらっていた。今この時間の分ズレこんだ仕事は、明日以降もたっぷり残っている。けれど、今はそんなことすべて忘れてしまいたかった。今日これから、明日も明後日も、ずっとこの場所にいたい。そうできたら、と音羽は願う。
そしてそれができないのだったら、今この時、時が止まってしまえばいいのにと思った。たとえ二度と時が動くことがないとしても、これ以上の幸せはもう訪れることはないと思えば残りの時間など惜しくもなんともない。
言葉を紡ぐことができない音羽とは反対に、彼女は堰を切ったように喋り続けていた。
もう、バスケットの中にハートのクッキーは一枚もない。すべて、音羽の掌の上だった。
「慎之介さんに全部あげます。わたしの、真心と誠意の証です。遅くなって、ごめんなさい」
彼女を抱きしめたい。そう思いながら手のひらいっぱいの彼女のハートをどこにも移すことができず、音羽は震える唇を開いた。
「夢みたいだ。嬉しい……」
追いついた。と音羽は思った。
一年ちょっと前には、想像することもできなかった世界。キラキラした、人間の世界。
「ねえ。これ」
「うん」
「君のハート。これからも全部。君がくれるっていう分は全部、僕のものだからね」
「うん。わたしのハートはこれからも全部、慎之介さんのものだよ」
「ふふ。ありがとう」
甘いものは、幸せの味がする。音羽の持論だった。
それは、絶対に間違いではない。だって。僕の手の中には世界で一番甘くて、世界で一番幸せなものがあふれてる。
「……離さない。いただきます」
全部砕いて丸のみにして。自分の身体の一部にして。
自分の心も相手の心も何もかもいっしょになってどろどろに溶けてしまおう。
あまーいの。もっと。ちょうだい。
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