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恋煩い日記

2012年は毎日何かを書こう、という目標のもといろいろな創作をするブログになりました。

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不憫な佐伯瑛氏

うむ、GS3も萌えるけど、GS2も萌えるのだぜ、萌えるのだぜ!!!

というわけで、だいぶ前に佐伯氏の妄想をしてたのでそれを書いてみるのだ。





(心配させるなよ)



みなこの行動が普通の「常識」で測れないことくらい、分かっていた。
分かってはいたんだけれど、俺は少し認識が甘かったのかもしれない。人通りの激しい大通りで、俺はみなこの姿を探して当てもなく歩いていた。

ついさっきまでは一緒にいたのに。
俺は学校が休みの日でもいろいろ出掛けたりなんだと忙しくしていて、今日は久しぶりにみなこと出掛けてくることができた。
みなこはとても喜んでいて、ただこうやってショッピングモールをぶらぶら歩いているだけだというのにいつも以上にはしゃいでいるように俺には見えた。ただ、あいつの場合普段から信じられないくらいにテンションは高いけど。
服を見たり、本屋を冷やかしてみたり、インテリアショップに入ってみたり。
あいつはどの店でも得意の俺にはよくわからない世界を繰り広げて、俺は適当に返事をしていただけだったけれどそれはそれは楽しそうだった。
子供のようにきょろきょろして、アレはこうだ、それはなんだと言ってくる、アイツの声は俺にとってはほとんど日常化してしまっていたのかもしれない。

ちょっと輸入物の食器を眺めていた間に、そのうるさい声が聞こえなくなっていたことに、俺はしばらく気がつかなかった。



(まったく。今どき小学生でも迷子になんかならないぞ。何やってんだよ)

ケータイ持つながrない。呼び出し音は鳴っているけれどでる気配がない。
リダイヤルがあいつの名前だらけになったケータイ電話をしまい、俺は舌打ちしそうになって慌てて踏みとどまった。
そう広い場所ではないし、危険なところでもない。
少しくらいはぐれたって、心配するほどのことではない。

心の中ではそう言い聞かせるのだけれど、どうしてかそういうとき、俺の頭の中は悪い想像でいっぱいになってしまう。

だって。

頭の中に浮かんだ言葉を、俺は即座に打ち消した。

(ちがう、そうじゃない。心配なんかしてないんだからな!)


ぶん、と頭を振って、ズカズカと大股で歩き始めたそのとき。聞きなれた呑気な声が聞こえてきた。

「あっ。佐伯くん!」
「みなこ! おまえ、どこ行ってたんだよ」
「えへへ。綺麗なカーテン生地見つけて、つい見入っちゃったんだ」
「たく、つい、じゃないよ」

人の気も知らないで。
みなこははぐれた時には持っていなかったはずの紙袋を一つ持っていた。
俺とはぐれたというのにのんきに買い物までしていたらしい。本当にあきれた奴だ。

「お前、俺がどれだけ……」
「あれ? 佐伯くん、もしかして泣いてる?」
「なっ、泣くわけないだろ! そんなわけないじゃん!」
「だって、ちょっと目がうるってしてるよ?」

つい緩んだ涙腺を誤魔化すように、俺はみなこの視線から顔をそらした。
俺、本当にカッコ悪いかもしれない。

「俺は怒ってるんだ!」
「そっか。さえきくん」

ぐるりとみなこは俺の正面に移動してきた。
腹が立ったので俺はまた後ろを向く。 
するとまたみなこが追いかけてくる。 ぐるぐる、ぐるぐる、俺たちは意地を張り合ってまわり続ける。

「俺は怒ってるんだからな! 勝手にどっか行って、ケータイも出ないし、全然見つからないし。おまけにやっと見つけたと思ったらのんきに買い物までしてるし」
「えっと……ごめんね? 佐伯くん」
「謝るんだったら最初からするなよ。もう、俺は知らないからな!」
「うん、ごめんね?」
「俺が、なんでも許すと思ったら大間違いなんだからな」
「ごめんなさい、もうしません」

ぺこん、とみなこが頭を下げる。
肩までの髪がさらりと下に落ちた。

でも俺は分かってるんだ。こうしたってみなこは変わらないんだってこと。
だって、それがみなこだし、真面目になって「普通」になってしまったらみなこじゃないんだ。

通りの真ん中で立ち止まっている俺たちは、きっとすごく目立っていただろう。
急にそのことに気がついた俺は、「いくぞ」と声をかけて歩き出した。
後ろから、パタパタと憑いてくる足音がする。

歩きだして、ちょっともしないうちに、みなこは反省のかけらも見られない声で話しかけてきた。
やっぱり、みなこはみなこだ。

「あのね、カーテン生地、珊瑚礁の窓にどうかなぁって思って!」
「は? 珊瑚礁?」
「うん。 青くてね、佐伯くんみたいな色なんだよ、素敵なの! だから、買っちゃった!」
「だってお前、珊瑚礁はまだ……」
「うん。だからね、これは大事に取っておくの。そしたら、珊瑚礁の窓につけてくれる?」


さっき打ち消したはずの言葉が、頭の中にまた浮かんできた。

(だって……こいつ、可愛いから。なにが起こるか分からないから心配なんだ)


俺は、手を伸ばしてみなこの腕をとった。
もう、今日は絶対にはぐれないように。

「考えとく」





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