惚れてまうやろーっ！！

本日三つ目。コレが普通のときメモ関係ある日記。
（つまり下の二つは全然関係ないので読み飛ばし可能です）というかこの日記だって読まなくてもいいんだもんね、そうだよね。


某デパートの下を通りかかったら、なにやら浴衣を着た若い男女がたくさんいるんです。
なんだなんだ、まだ昼間なのに花火大会か、しかし今日は火曜日だぞとか思っていたら、彼らビラ配ってるんですよ。
「○○デパートで浴衣フェアやってまーす」
って……さ。
正直言って浴衣なんぞ着た若いにーちゃんに笑顔でチラシ配られたらそりゃあ受け取りますわ！！
絶対配布率高い！　絶対！！
ま、浴衣着ることなんてないと思うけど。


というわけで浴衣ですよ、浴衣！！
赤城と花火大会に行きたかったなぁ、という話。

受け取ったチラシを一瞥して、すぐに赤城はそれを隣の雪に手渡した。

「浴衣フェア、だって」
「そうみたいだね。ご苦労様だね、ああしてチラシまで配って」
「そういえばジェスとナナミでも浴衣売り出しはじめてるんだよね」

彼女はチラシを鞄の中にしまうと、行きつけのお店でもフェアが始まっていたことを思い出した。先月の初めごろにメールが届いていて、いつか見に行こうと思っているうちにすっかり忘れていた。

「ふぅん。買うの？」
「うーん。わたし、浴衣持ってないの。夏祭りか花火大会の時くらいしか、着ないでしょ？」
「まあ、そうだね」

言いながら、赤城は彼女の浴衣姿を想像しようとした。けれど、一度も見たことがないものはなかなか想像しづらいものがある。赤城の努力は実を結ばなかった。

「花火大会、一緒に行こうか。いつだったっけ」

はばたき市でも毎年花火大会が行われているのは赤城も知っていた。けれど高校に入ってからは「なんでこの暑いときにわざわざ人であふれかえっているところに出かけて行かなくちゃならないのさ、花火だったら遠くからでも見えるのに」ともっともらしい理由をつけて縁日にも花火大会にもいかなかった。
なのに彼女とだったらこんなに簡単に「行こう」と思える。むしろ「行きたい」と思う。

「うん、行きたい！　えぇとね、たしか8月だよね。あとで調べておくね」
「君は、去年までは誰と行ってたの？」
「え？」
「花火大会」

高校生の男女にとってはきっと外せないイベントだろう。なにしろ、何の気兼ねもなく夜遅くまでで歩いていてもいい理由があるのだ。それに花火、縁日、浴衣。なにかが起こってもおかしくない雰囲気ときっかけがたくさんある。
きっと誰かとの思い出があるのだろう、そう覚悟をして言ったはずなのに、彼女はキョトンとしたような顔で聞き返してきた。

「え？　行ってないよ。初めてだよ」
「ほんとうに？」
「うん」
「本当の、本当に？」
「そうだよ。なんでそんなに疑り深いの？　もしかして、赤城くんは誰かと一緒に行ったことあるの？」
「ない、ないよ！　あるわけないだろ！」

思わずテンションが上がるのは赤城の悪い癖だ。
彼女の手を掴んでいた。驚いたように一瞬赤城の顔を見上げて、彼女はくすりと笑った。

「友達が出掛けてたのは知ってたけど……、だって、こういうのは、好きな人と行きたいじゃない。だから、誰ともいかなかったんだよ」

まったく、この子は。

「僕を喜ばせようったって、そうはいかないよ」

思い切り喜んでいるくせに、赤城は口だけはうそぶいて、そしてショッピングモールの方へ足を向けた。「どこへ行くの？」と手をひっぱられるようにしてついてくる彼女が尋ねる。
赤城は振り返って答えた。

「ジェスかナナミだろ？　浴衣、見に行こう」

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そんな7月の話。