おはようございます！

仕事に追われつつも妄想はやめられない。
しかし切羽詰まってきてしまったわたしは携帯の待ち受け画像を設楽先輩と玉緒先輩のツーショット（縦画面用）、玉緒先輩の一番好きなスチル（横画面用）に設定し、通勤用のウォークマンにGS3のテーマ曲を入れて1曲リピート設定にしてしまいました。
オタクすぎる携帯は誰にも見せられない仕様になりましたが、どんなに心がすさんでも携帯を見ればすぐに心がいやされるのです。効果絶大です。

まあ、そんな病んだ話は別として、続きに妄想。
久しぶりに赤城の話。

（あいさつ運動）……短編ドラマCDのネタバレッぽい話です。





数枚のコピー用紙をホッチキスで止めた、簡単な議事進行表が回ってくる。
その一番初めに乗っている文字を読み、交流会に出席している面々に戸惑ったような表情が浮かんだ。中にはあからさま嫌悪感を示す者まで現れる。
正直、こういう反応だろうとある程度予想できていたのでそれについては「まあ、そうだろうな」くらいの感想しか持てなかった。
先回の交流会でアレだけ反対意見ばかりが出た議題について、今更何を話すことがあろうか。というところだろう、みんなが言いたいのは。
さて。予想通り面白いことになりそうだ。

一番初めの議題は……『あいさつ運動の二校同時実施について』



「……僕の意見は以上だ。何か質問、または意義のあるものは挙手してくれたまえ」

滔々とほとんどよどみのない、高校生のレベルではほぼ完ぺきといってもいいようなプレゼンを終えた氷上くんがガタリと椅子に座った。そして彼はぐるりと交流会出席メンバー――彼のいるはね学と、僕のいるはば学の生徒会執行部員――の顔を見渡す。
一番最後に僕と目が合って、彼は少し面白そうにメガネの奥の瞳を光らせた。多分僕も同じような表情をしていたと思う。

やがて、何人かの手が上がる。先回と同じだ。「あいさつをしたからといってなんになるのか？」「わざわざ自分たちがそれをする意味があるとは思えない」「挨拶とは自発的にするもので、人に強要されるものではないのではないか？」「わざわざはね学とはば学の執行部が共同で行うべきことではない」……うんうん、もっともだ。
一通りの反対意見が出揃ったかな、というところでまた氷上くんと目があった。……はいはい、分かったよ。

「ちょっと、いいかな」

手を挙げると、みんなの視線が一斉にこっちを向いた。

「なんだい、赤城くん」

しらじらしいことこの上ない。こういうのを茶番というのだろうか。
僕は笑いをこらえるので精いっぱいだったのに、氷上くんは至極真面目な顔をしていて（というか氷上くんの真面目でない時の顔なんで、まだ見たことがないけど）ますますふきだしそうになってしまう。

「反対意見優勢のところ悪いけれど、僕は賛成だな」

そう言った時のみんなの顔。アレが見られただけでも、今日わざわざ放課後にはね学まで来た甲斐があった。
まあ、気持ちは分からないでもない、前回同じ議題について話し合ったときに反対派の先鋒にいたのが他ならない僕なんだからね。
それが一カ月とたたないうちに宗旨替えしたんじゃ、驚くなという方が無理ってものだ。
けれど、そんな反応もある程度は予測のうちだ。僕は今日ここに来るまでの間に考えていたことを話し始めた。

「たしかに、みんなのいうことも一理ある。それに、僕自身つい先日まではみんなと同じ意見だったしね。
というか、僕がこのあいさつ運動に反対だったのは「高校生にもなって、早起きして校門に並んで、登校してくる生徒たちに向かってにっこり笑って『おはよう！』だなんて、恥ずかしくてやっていられない、それにカッコ悪いし」っていう気がしたからだよ。……もっともらしい意見を言ってたけどさ、みんなもそうだろう？」

ぐるりとみんなの顔を見回す。
悪いけど、こういうのは氷上くんより僕の十八番だ。

「けど、朝あいさつをするのはそんなに悪いことか？　むしろ僕はいいことだと思っている。あいさつ運動だって、いいことだと思うよ。
挨拶をされて嫌な気分になるのか？　僕らが校門で生徒に一声かける、そのことで誰かが少しでも迷惑を被るというのなら話は別だけど、そんな可能性はあるか？　あると思う者は反論してくれて構わない。
そりゃあ、『名前も知らない人から「おはよう」と言われたらジンマシンが出る』とかいう特殊体質の生徒が我がはば学に在籍しているというのなら考慮しなくちゃならないだろうからね。けど、そんな可能性はほぼないと思うよ」

誰かがそれを聞いてふふっ、と鼻で笑った。
うん。僕が喋り出した時には冬の朝、池に張った氷みたいに踏めば壊れそうな雰囲気だった会議室も、少しは空気が緩んだかもしれない。
僕は最後に息を吸い込んだ。

「ま、それは冗談として。
概ね挨拶というのは世間から見れば歓迎されこそすれ、非難されるべきことではないだろう。
それを、ただ『カッコ悪いから』って、それだけでやろうとしないのは、それこそカッコ悪いと思わないか？　どうかな？」
「そこでみんな、これを見てくれないか」

僕が話し終わると待ってましたとばかりに氷上くんがレポートの書かれた用紙を配りだす。
これこそ、前回、正論の言葉だけで人を動かそうとしていた氷上くんが、彼なりに考えて導き出したらしい、人とのコミュニケーションの取り方だ。
はね学でいち早く氷上くんが実施しているあいさつ運動について、はね学の生徒にアンケートを取った結果がまとめられている。

それにしても、痛快だね。
このアンケート結果を見たら、嫌でもはば学でもあいさつ運動を始めなければならなくなるだろう。
氷上くんは多少不器用で、それこそお人好しのバカかもしれないけれど、度を越したお人好しすぎて、ここで反対すると自分が嫌な奴みたいに思えてくるほどだからタチが悪いよ。



しかし、ここからが問題だぞ。
今演説をぶってしまったおかげではば学生徒会執行部の中じゃ、僕があいさつ運動に一番積極的みたいな立場になってしまったし。
かといって、僕は氷上くんみたいにみんなを主導して、自ら率先して校門に立とうなんていう気はないからね。
はば学に持ち帰ったら今度は確実な当番制の確立と、参加者を多くさせて自分の当番が回ってくる間隔をできるだけ長くするように仕向けなきゃ。

ますます面白くなりそうだ。

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ドラマCDを聞き返してみたんですが、なにしろ男友達（というか氷上くんや佐伯くん）と喋っている時の赤城のテンションが好きすぎて困る、と今回も思った。
デイジーと喋っている時と明らかにテンションが違っててね、それがまた抑え目ですごくいいんだよ。