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恋煩い日記

2012年は毎日何かを書こう、という目標のもといろいろな創作をするブログになりました。

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こんなんでましたっ

サンタコスを字で書いても楽しくない、と言っているそばから浮かんだ妄想でこんなものを書いてみる。


困った時にはこの二人、
赤ずきん小春ちゃんです。







「赤ずきん小春ちゃん・メリークリスマス!」








十二月二十四日の夜、赤いずきんをかぶった小さくてかわいい女の子、小春ちゃんの家に狼の志波くんがやってきました。

「こんばんは、志波くん!」

小春ちゃんはすぐにそのことに気がつきました。いつもピンととがった志波くんの三角形の大きな耳の間に、今日は大きな角が生えているのです。

「志波くん、それ、どうしたの?」

小春ちゃんがその木の枝みたいな大きな角を指して聞くと、志波くんは当たり前のようにこう言いました。

「今日は俺はトナカイなんだ。プレゼントを配りに行くぞ」
「……えっ?」

あたふたしている小春ちゃんに構わず、志波くんはぱちんとひとつ指を鳴らします。
すると、なんと言うことでしょう!

「きゃぁぁぁ!」

悲鳴を上げた小春ちゃんを光が包み、そして一瞬後には。

「……やっぱり、似合うな」
「な、なにこれぇ」

赤と白のサンタの服を着た小春ちゃんがそこに立っていました。
いつもの赤いずきんは、白いふあふあのポンポンがついた帽子に変わっています。ミニスカートのワンピースタイプの服に、短いマントを羽織って、足には黒いブーツをはいていました。

「さあ、早くしねえと夜明けまでに間に合わなくなっちまう。飛ばすぞ」

志波くんがまたぱちんと指を鳴らすと、光に包まれて一人乗りのソリが現れました。

「すごい、志波くんって魔法使いなの?」
「俺が出来るのはこれだけだ」

ひょい、と小春ちゃんを抱き上げて志波くんはソリに乗り込みます。
一人乗りのソリなので、小春ちゃんは志波くんの膝の上に座らされました。
二人が座席に座ると、音もなくソリがふわりと浮かび上がります。小春ちゃんは思わずぎゅぅっと志波くんの腕をつかみました。





「小春、見ろ。すごいぞ」

志波くんの声が聞こえて、小春ちゃんはぎゅっと閉じていた目を開きました。
ソリは地上二メートルくらいのところを素晴らしい速さで滑るように進んでいます。
てっきりものすごい高さのところを飛んでいるのかと思っていた小春ちゃんは少し拍子抜けしましたが、慣れればこの方が怖くありません。
すっかり雪化粧をした森の木々が後にびゅんびゅん後ろに遠ざかって行きます。月の光を雪が反射してキラキラとキレイでした。

「寒いだろ、大丈夫か」
「うん、平気。キレイだね」
「ああ」

小春ちゃんの、赤くなってしまったほっぺたを、志波くんの大きな手が包みます。冷たくなっていたほっぺたがじんわりと暖かくなって、小春ちゃんがにっこり笑うと志波くんのいつも無表情なその顔も少し緩むのでした。
実は志波くんは高いところが苦手だったので、あまり高くソリを飛ばせないのですが、カッコ悪いのでそのことはとりあえず小春ちゃんにはナイショです。
そして、志波くんはソリの座席の後ろから大きな袋を引っ張り出しました。

「これを配るんだ。森のみんなに」
「志波くんが?」
「小春が。サンタクロースだからな。俺はその手伝いだ」
「ふぅん……」

小春ちゃんは、何で自分がそんなことをしなくてはいけないのかよく分かりませんでしたが、志波くんが言うことだし、志波くんと一緒ならいいか。と気楽に思いました。
それくらいに、志波くんの膝の上はあったかくて気持ちがよくて、安心できる場所でした。

「ねぇ、トナカイさんはサンタさんのソリを引っ張るんじゃないの? どうして志波くんはソリに乗ってるの?」
「俺は本当はトナカイじゃねえし、小春も本当はサンタじゃねえから、そんなことしたら空から落ちるぞ」
「えぇっ! それはダメだよ!」
「だろ。……それに、俺がソリを引っ張ってたら、小春とくっついていられねえし」

これが志波くんの本音でした。
でものんきな小春ちゃんはそなんとなく納得してしまいます。
志波くんはもう一度ぱちんと指を鳴らして、ソリのスピードをあげました。

「行くぞ」
「うん!」







大きかったプレゼントの袋がようやく空になる頃には、そろそろ夜が明けようとしていました。
最後のおうちから出て、小春ちゃんのお家に向かってソリを走らせている途中、寝ちゃいけない、と思いながらも小春ちゃんのまぶたは今にも閉じそうになっています。
志波くんは黙ってソリの方向を決めながら、膝の上でこくりこくりと舟をこいでいる小春ちゃんの様子をいつになく優しい目で見つめていました。

「こはる、寝たのか?」

小さな声で、志波くんは声をかけました。けれども志波くんの体温と、ほとんど揺れがないソリの上の心地よさにすっかり小春ちゃんは眠ってしまっていました。
志波くんの頭に生えていた大きなトナカイの角が、光に包まれてぼんやりと消えて行きます。代わりに三角形の大きな黒い耳がくるりと動きました。
それから志波くんは乾いてしまいそうな唇をくるん、と赤い舌で舐めました。そして、膝の上に抱いている小さな自分だけのサンタさんに、こっそりと願い事を言ってみることにしてみました。

「俺も良い子にしていたから、プレゼントもらってもいいよな……?」

目を閉じている小春ちゃんには、低いその声は聞こえていないようです。
その天使のような寝顔に、志波くんはゆっくりとゆっくりと、顔を近づけていきました。





「……あれぇ? 志波くんは?」

小春ちゃんはベッドの中で目が覚めました。
さっきまで、サンタの格好をして、空飛ぶソリで志波くんと一緒にプレゼントを配っていたのに。
着ている洋服はいつも通りだし、赤いずきんもそのままです。髪飾りにしている小さな白いお花もちゃんとついていました。

(……これが有名な、夢オチ?)

ベッドから降りて、小春ちゃんはお部屋の中にひとつ、眠る前までにはなかったはずの包みが置いてあるのに気が付きました。
小さな紙袋です。ピンク色で、金色のシールが貼ってありました。

なんだろう?
小春ちゃんがそれを開くと、中から一枚のカードがひらりと床に落ちました。

それを見て、やっぱりさっきまでのは夢じゃなかったんじゃないかなあ、と人差し指で唇をそっと押さえながら、小春ちゃんは思ったのです。


メリー・クリスマス、小春。
唇が乾燥しているときに、街ではこういうのを使うらしい。小春も使ってみたらいい。


袋の中身は、志波くんが街から買ってきた可愛いリップクリームが入っていました。





そんな、森のクリスマスの一日の夢みたいなお話です。






トナカイ志波くんと一緒に空飛ぶソリで一緒にサンタさんやればいいじゃない! と思ったんだけど志波くんが高所恐怖症だった件。
イメージ的にはあれだ、ドラクエ5の空飛ぶ絨毯、あんな感じの低さで空を飛ぶのだ。


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