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恋煩い日記

2012年は毎日何かを書こう、という目標のもといろいろな創作をするブログになりました。

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赤城100

この前大失敗した「鶏のサッパリ煮」リベンジしています。今度は酢を入れすぎた予感。酸っぱいよ酸っぱいよ。

最近サイトの更新もせずにブログに落書きばっか書いてますね。もちろん更新もしたいんですが。
というわけで「赤城」カテゴリー100個目ですよ!

いつものように「こういうの書こう!」と思ってたのと全然違う感じに仕上がりました。なんていうか、赤城の片思い期間(ってほとんど高校三年間ずっとなんだけど!)が好きなんですよ。なにをしててもデイジーのことを考えちゃうというか、遠くにいる名前と顔しか知らない女の子のことをずーっとずーっと考えているっていうのが好きなんですよね。一途の恋万歳!
……なのになぜか母が出てきて、母との会話が楽しくなっちゃったんだ。
赤城の母は天然ボケに見えるんだけど本当は頭のいい才女だよ!だって赤城と大地の母親なんだからね!



というわけで、続き。
赤城の母と兄(は会話だけ)が出てきます






 ぶちり、と音を立ててシャープペンの芯が折れた。
 ノートの端に落ちたその芯にふっと息を吹きかけて机の上に落とし、改めてシャープペンをノックした。カチカチカチと、僕はこの音が少し好きだ。もっと頻繁に押せたらいいと思うけれど、たまにしか聞けないからこそ好きなのかもしれない、と思うこともある。

(彼女のことも、これと同じなのかな)

 たまにしか会えない、しかも偶然でしか会えないからこそ、こんなにもひかれるのかもしれない。毎日当然のように学校で会える子だったら、こんなにも好きになっていただろうか。
 シャープペンは芯が切れていたみたいで何度ノックしても手応えがない乾いた音を立てるだけだった。
 ちょうど集中力も切れてきたところだったので、僕はふうと一つため息をついて背筋を伸ばした。
 勉強中にまで、彼女のことを思い出すようになるなんてやっぱり完全にイカれてるな。恋煩いなんて現象、映画や小説の中だけの話かと思っていた。

 明日から期末テストだ。ぼうっとしている場合じゃない。少々怠け癖のある僕は気を抜くとすぐに成績を落とす傾向にあるのは分かっているし、もう受験に向けて大事な時期にさしかかっているから、うっかり成績を落としている場合ではないことは百も承知だ。


「ユキちゃん? 入ってもいい?」

 ドアの外から母さんの声がした。いいよ、と言う前にドアが開く。まったくこの母さんは悪気がないからタチが悪い。

「お母さん、返事する前にドアを開けたら入ってもいいか聞いてる意味がないじゃない」
「あら、そうだったかしら」
「そうだよ」
「ごめんなさいね、お母さん気がつかなくって」

 母さんはいつもの調子でまったく悪びれないで様子で歩いてくると、机の上にサンドイッチとコーヒーの乗ったトレイを置いた。
 はいはい。毎回テストの度にこうして夜食を用意してくれるのはとてもありがたいから細かいことをこれ以上追求するのはやめておこう。けど、一言だけは言っておく。(わざわざこういうことをする性格だから、「一言多い」って言われるのかもしれない)

「お母さんが見たくないようなことを僕がしていたらどうするつもり?」
「見たくないこと? って、なにかしら」
「いろいろあるだろ、いろいろさ」

 僕が見られたくないことだっていろいろあるけれど、それ以上に母さんが見たくないことだってあると思う。なんて目論見で言ったんだけど、どうやらこの人にはそれも通じないみたいだった。
 ちょっとした嫌味を言われたというのに母さんはなぜかにっこりと笑っていた。こうして見ると、この人もなかなかの美人さんだ。……もうおばさんだし、僕は美人さんはあまり好みのタイプではないけどね。(もしかして、これも一言多い?)
 僕は早速母さんが持ってきてくれたサンドイッチを一つ手に取った。

「ユキちゃんは試験勉強の合間にそんな破廉恥なことをするような子じゃないもの。お母さん信じてるから大丈夫よ」
「……分かってるんじゃないか、ほんと意地悪だね、母さんは」

 口に放り込んだサンドイッチに思わずむせながら、僕は母さんを見上げた。……この人は、やっぱり僕の母さんだな。あまり敵う気がしない。

「なんのことかしら。とにかく、お母さんユキちゃんのことは信用してるわよ。少なくとも試験前日に女の子と一緒にお勉強会を開くようなタイちゃんよりはね」

 兄の大地は試験勉強だといってどこかに出かけていた。人目を気にせずにそういう行為ができるところは少し羨ましい。そして、そんなことをしているくせに僕より成績がいいところと、周囲からは「真面目で頼りがいがある赤城大地くん」と評価されているところも。まあ、母さんはそのへん見抜いているみたいだけど、とにかくあの兄は僕よりも優秀だ。それは認める。

「大地はあれでみんなから頼られているからね。勉強教えてくれって言われてるんだよきっと」
「あらぁ。タイちゃん人気者なのね」
「そうだよ」

 性格は似ているけれど、大地のほうがたぶん立ち回りが上手いんだろう。一言多い皮肉だってなにも僕だけの専売特許じゃない。大地だって同じくらい性格悪いはずなのにそれが目立たないのはフォローが上手いからだ。そういうところ、長男なんだなってちょっと感心する。

「ま、大地は心配しなくてもいいんでしょ。どうせまたトップクラスの成績取ってくるんだろうから」
「ユキちゃんだってきっと負けないくらいの成績を持って帰ってきてくれるってお母さん信じてるから」
「はいはい。そう信用されたら、期待に応えないわけにはいかないね」

 天然ボケかと思いきや、この人は僕をノセるのが上手いよな。人の手のひらの上で転がされるのなんてごめんだけど、やっぱり母さんには敵わない。

「お母さんそろそろ寝るけど、お皿は台所に置いておけばいいわよ。それと、あんまり頑張りすぎて明日お寝坊しないように、ほどほどにして寝るのよ?」
「了解です。じゃあ、お休み」
「頑張ってね」

 そう言って母さんは部屋を出ていった。
 パタリとドアが閉まるのを確認してから、僕は再び机に向き直った。ずいぶんといいタイミングで気分転換になったな。コーヒーは少し冷めていたけれど、眠気覚ましにはなる。

 はね学も偶然にもテスト期間がかぶっていると風の噂で聞いた。あの子も今頃勉強しているのかな。
(案外、もうぐっすり眠っているかもしれない。意外とどこかのんびりとした子だから)
 バスの中やハンバーガーショップでの会話を思い出して、少しだけ顔がゆるむ。

 ペンケースからシャープペンの芯を取り出した。そしてペンケースの中にしまっていた紙切れを思い出す。ハンバーガーショップで彼女からもらった手帳の切れ端だ。彼女の名前が書いてある。
 僕はそれを丁寧に取り出して開いて、オレンジ色のボールペンで書かれた彼女の名前をしばらく眺めた。

 うん、もう一息、頑張ろう。

 新しく芯を入れたシャープペンをノックすると、今度は軽く気合いが入ったような音になった。まあ、そんなの僕の思いこみかもしれないけどね。

 やばいな、これからシャープペンをノックする度に彼女のことを思い出せそうだ。




ながいね!
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