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恋煩い日記

2012年は毎日何かを書こう、という目標のもといろいろな創作をするブログになりました。

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7話目です

引き続き、お楽しみください。



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赤主SS <いつも、いつまでも>


※以下をよくお読みのうえ、ご了承のうえ先にお進みください。
・赤城×デイジー前提
・卒業後、大学生設定
・灯台に告白に来たのは佐伯、でも振られた
・佐伯とデイジーは大人な意味での関係あり
・ぶっちゃけ、佐伯は当て馬です。

赤城が出てくるのは4話からになります。
赤城のキャラが、ゲームのイメージと大きく違います。爽 やかでもカッコよくもありません。
「こんなん赤城じゃない!」とか言わない。これ約束。
許容できない方は読まないで下さい。管理人は打たれ弱いです。


◆本文はこちらです。
1話 2話 3話 4話 5話 6話 7話new!! 8話 9話 10話 11話

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(いつも、いつまでも)









「ロールケーキ、作ってみたんだ。店で出すメニューにどうかと思って」
「へぇ~。……うわぁ、白くってキレイ!」
「だろ。生クリームとか、少し甘めにして、コーヒーとも合うように」
「うん。いいと思うよ。シンプルなのが瑛くんっぽいし」

突然に佐伯が「今夜そっちに行く」とメールをよこしてくるのはあまり珍しいことではなかった。
手土産に、手作りのスイーツを持ってくることも。
今は閉店している「喫茶珊瑚礁」を再オープンさせるのが佐伯の夢だった。そのために大学では経済学と経営学を学んでいるし、そのための資金を貯めていたり、時間を作っては起業やビジネススキルなどに関したカルチャースクールなどに通ったりしていることも雪は知っている。
そして、たまにはこうして女性客に受けそうなスイーツやカトラリー、コーヒーのブレンドなどを考えては雪に見せてくれる。

佐伯は持って来たケーキをキッチンで切り分けて、相変わらず雪の部屋にはインスタントコーヒーしか置いていないことに文句を言いながらも二人分のコーヒーを用意してくれた。

「いただきまぁす」
「どうぞ。……お前って、本当にケーキを目の前にすると嬉しそうな顔するよな」
「だって、瑛くんのケーキ、美味しいんだもん」

フォークを手にし、ロールケーキを切り取って口に運ぶ雪の姿を、佐伯はテーブルの向かいからじっと見つめていた。

ずっと好きだった。
高校三年間は誰にも本心を見せず、仮面をかぶった優等生でいようと思っていたのにその仮面をあっさりとはぎ取ってしまったのは雪だった。けれど、そのおかげで三年間、崩れることなく歩いてくることができた。
こいつのためになら何でもできると佐伯は思っていた。それこそ、他の男が好きだと知っているのにこうして諦めきることができずに付きまとってしまうくらいには。雪が一人でいるときに、恋心を隠して支えてやれるくらいには。そして、自分のことを好きになってくれる可能性はないと分かっていながら身体だけでもつながろうと捨て鉢な気にもなるくらいには。

幸せそうにケーキを食べる顔をもうこうして近くで見ることができないのかと思うと、少し泣きそうになった。

「おいしぃ~。瑛くん、これすっごく美味しいよ。もう、瑛くんケーキ屋さんにな……っ!?」

はしゃいだ声をあげる雪の言葉を途中で遮って、その身体を抱きしめた。
生クリームと、インスタントの薄っぺらなコーヒーの香り、そして雪自身の甘やかな匂いの奥から、むせ返るような煙草の匂い。
佐伯は顔をしかめ、それでも腕を離さずにますますきつく抱きしめた。

「て、瑛くん? どうしたの……?」
「煙草の匂い。なんだよこれ」
「えっ。……あ、あの。……き、今日学食で、喫煙席の近くに座ったからじゃないかな……」
「ウソつくなよ」
「……えっ」

抱きしめていた身体を離す。あぁ、いまのでもう最後だったのだ、と思うと、もう少し離れたくなかったと、この期に及んでも佐伯は未練がましく思った。
少し驚いたような顔。内海雪は、誰が見ても驚くような美人というわけではないけれど、佐伯は彼女が好きだった。
頭が良くて、気が回るくせに自分のことには不器用で、時々ぼーっとしていて危なっかしくて。

(俺がついていなくちゃだめだって、思っていたのに)

口を開くと声が震えそうだったが、構うものかと思った。雪を相手にもう、自分の情けないところなんか何度も見せている。今更、カッコなんかつけられない。

「今日、見たよ。法学部の赤城ってヤツと一緒にいる所」
「…………えっ……?」
「はば学出身なんだって? 有名な奴なんだな、女子に聞いたらすぐ教えてくれた」
「……えっと」
「お前が喫煙席に座るのも珍しいと思ったし、なにより、顔見てわかった。……あいつが、お前の好きだった奴なんだろ?」
「……敵わないなぁ、瑛くんには」
「当たり前だ。何年もお前のことばかり見てたわけじゃない」

ぽこん、と軽くチョップをする。……これも最後だ。
はずみで小さく目を閉じた雪に素早く顔を近づけた。

「上手くやれよ。きっとお前なら上手くいく。ケーキは餞別。それと」

じわりと雪の目に涙が浮かんだ。
もしかして、自分も泣いているかもしれない、と佐伯は思った。けれどそれは無視した。

「俺がいたら、お前の邪魔だろうから。もう来ない。……今まで悪かったな」
「……瑛く……っ!」

後ろから追ってくる声も無視して、佐伯は玄関にあった靴をつっかけるようにして履くと急いで部屋を出た。

外に出ると、コーヒーの匂いも生クリームのにおいもしなくて、無性に心もとなくなったけれど、あの吐き気すら覚えるような煙草の香りもしなくなったので少しだけ清々とした。

そして、佐伯は闇雲に走りだした。







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