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恋煩い日記

2012年は毎日何かを書こう、という目標のもといろいろな創作をするブログになりました。

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騎士と姫(赤主)

以下、パラレルにもほどがある赤主話。スルー推奨。
特に誰からも要望もないのに自己満足で書いている話。


ちょっと前に 主従萌えしたaikaさんから パクリ インスパイヤされて騎士と姫、赤城バージョンを書いたのですが見事な悲恋フラグでございました。
なんですかね、普段はハッピーエンド主義者なんですがどうもこう、身分の差をもってこられるとそれを愛の力で乗り越えられる気がしない!(妄想者としてあるまじき発言!)
というわけでこの前aikaさんとメッセでお話したときも騎士赤城の話になって、
「ツンデレな姫デイジーがいざ好きというときに恥ずかしがるんでしょうね!」
とおっしゃるaikaさんに対し、
彼女は赤城も自分のこと好きだとは全く思ってないから、結婚する間際になって「わたしあなたのこと好きだったんだからね!」とか捨て台詞はいて去って行く」
というバッキバキな失恋フラグを提示してしまい思いっきり引かれてしまいました……。
だって、だって、両思いにしてもその先には姫の結婚が待ってるんだよ!! 国を挙げての結婚なんて避けられNEEEE!

んでもって、なんとしてもデイジーに好きといわせるためにいろいろな策略を仕掛ける黒騎士を書け! という命令が下りましたので……す……が……。

そのときのノリで「あの赤城だったらとんでもない黒騎士になりそう」と言ってしまったのですが。
いざ書いて見ると……あんまり黒くない?? というか策略ドコー!??? ってなりました。
赤城の心境については解説が必要な気がする。全然描写できてない自信がある。
落書きと言うか、かなり手抜きで書いてますので(ごめんなさいaikaさん)いろんなところを温かい目で見ていただけると嬉しいのではないか、と。









「ねえ、聞いた? お姫様の噂!」
「なになに?」
「この前、お隣の王子様がいらしたじゃない」
「ああ、ご結婚の顔合わせにって」
「そこでね、お姫様ったら王子様ににこりとも笑わなかったんですって」
「え、あの、笑顔だけが取り柄みたいなお姫様が?」
「そうなの! だから、お姫様本当はご結婚なんてしたくないんじゃないかしらっていう噂なのよ」
「へえ~、そうなの。それはそうよねえ、会ったこともない人と結婚しろと言われてもね」
「別の話だと、お姫様、誰か好きな人でもいらっしゃるんじゃないかって」
「もしそうだとしたら、かわいそうな話ね」
「好きな男と結婚できないなんてたとえ、たくさん贅沢できてもねえ」

「何をおしゃべりしているんです? 勤務中にずいぶんと楽しそうですね」
「あっ……、赤城様!」
「すみません!」

 散々立ち聞きしておいて何を偉そうに。自分のバカさ加減にため息が出る。
 あわてて走り去っていった噂好きの侍女たちを見送って、赤城は自嘲気味に頭を振った。
 しかし今の話は初めて聞いた。我が姫が隣国の王子との結婚を望んでいないと? 更には、別に想う男がいるらしいなどと。
 所詮は噂だが、姫様付きの侍女たちの噂ともなれば市井の者たちの根拠のない噂とは違って多少は信憑性が高い。赤城は今までの経験上そういうことを知っていた。

 姫のことなら何でも知っていると思っていたけど……、やはりこの年になるとそうもいかないか。

 端正な眉をひそめて赤城は少しだけ宙を睨んだ。余計な口は出したくはないが、もし意に沿わぬ結婚をしようとしているのだったら。
 大切な……、大切すぎる存在だから、少しでも幸せになってほしい。

 

 


「どうでしたか、隣国の王子様にお会いして。素敵な方だとお伺いしていますが」
「うん。見たこともないほどキレイなヒトだったよ」
「隣国の王族の御家系は代々美男美女ぞろいと伺っていますからね」

 まもなくその美男美女ぞろいの王家に嫁ごうとしている幼なじみの姫はふぅん、とあまり興味もなさそうに相槌を打った。
 赤城は馬上の姫に手を伸ばした。その手を取って彼女はふわりと地面に降り立つ。体重を感じさせないような軽い動作だった。
 二人で乗ってきた馬の首をたたき、傍らの木につないだ。子供の頃、ようやく馬に乗れるようになった赤城が初めて彼女を連れてきた場所。徒歩ではとても遠くてこれないが、今となってはただの散歩よりも気軽にこれる距離になっていた。

「女のわたしよりもキレイなんだもん、気が引けちゃうよ」

 彼女はいつものように気が置けない口調で軽く言った。幼い頃から本当の兄弟よりも兄弟らしく育ってきたのでそれは当然かもしれないが。
 赤城は顔色一つ変えない。姫の耳の横の軟らかな髪をさらりと撫でて言った。

「そんなことありませんよ。姫様だって、きちんと着飾って女性らしくおしとやかになさっていれば隣国の王族にも負けないくらいお綺麗なんですから」
「それって、普段は着飾ってもないしおしとやかでもないってことじゃない?」
「それ以外にどういう意味があるのです」
「もー!! 赤城って意地悪だから嫌いよ」
「ええ、嫌いで結構です」

 そう言ってやると姫はくすくすと楽しそうに笑った。こうしていると錯覚しそうになる。だから僕はいつも自分から切り出すんだ。忘れないように。

「しかし姫様、わたしのことは嫌いでもかまいませんが、王子様のことは嫌いでは済まされませんからね。悪い噂など何一つない素晴らしい人格の方だと伺っております。きっと姫様もお幸せにしていただけるはずですよ」

 姫の表情が一瞬にして固まったような気がした。たとえて言うならば春の日差しのようだった笑顔が真冬の凍りついた池の氷のように。
 噂は本当だったんだろうか、と赤城は思った。王子の話題を出しただけでこの反応だ。いや、王子の話題だけではこうはならなかった、問題は結婚か。けれども言わないわけにはいかなかった。赤城の立場上。
 赤城が言わなかったら誰が言えるというのだろう。この姫にずけずけと歯に衣着せぬ意見をできるのは彼女の家庭教師でも父王でも侍女頭たる赤城の母親でもなく、他でもない彼のみであったから。

 誰よりも彼女の幸せを願っているのは自分だという自信もあった。そうでなければとてもこんなことはできない。

 ―― 正気の沙汰じゃないよ、本当に。

「まだ、お会いしたばかりだから王子様のことをお分かりになっていないんでしょう。ですから、最初から嫌だと思っていては愛するものも愛せませんよ」

 姫は冷えきった瞳で幼なじみの笑顔を見つめた。いつもそう。この年上の騎士はわたしのこと何でも分かってるというような顔をしてお説教ばかりして。

 ―― そのくせ、一番大事なことを何も分かっちゃいないんだわ。なにも!

 密かに城内の女性たちに「抱かれたい男ナンバーワン」などという称号で呼ばれているその柔らかな笑顔をこのときほどひっぱたきたいと思ったことはない。
 だいたい、みんな知らないんだわ。赤城がどんなに意地悪で、人のこといじめてばっかりで……なおかつ、相手が悔しがったり凹んだりしているのを見て喜ぶようなヒトだってこと!

「赤城が……それを言うのね」
「……? 姫様?」
「そっくりそのままその言葉、お返しするわ! 赤城なんて、……赤城なんて、もう知らない!」
「姫様!」

 姫は赤城の手を振りきって、くるりときびすを返すと、木の元につないであった馬の手綱をすばやく解くと、あろうことかひらりと馬の背にまたがって瞬く間に走り去っていってしまう。

「姫……!」

 赤城は少しばかり馬の背を追いかけたが、所詮馬の足に追いつくわけがない。すぐにあきらめて立ち止まった。
 ひとつだけ救いと言えるのは姫は馬の扱いに慣れているので落馬の心配はなさそうだということと、馬が消えた方向が城の方向だったということだ。ひとつだけと言いつつ二つ救いが見つかったのは幸いなので自分の言葉は取り消さないでいようと思う。
 そして、ひとつ問題なのは、ここから城までの距離を自分は徒歩で帰らなければならないということか。

(なんだってんだ。まったく)

 姫のわがままなのは少しくらいは許す。自分を含め、さすがにこの国の最高権力者の娘には多少甘くもなるし、……自分はそれだけではない理由がある。
 それにしたって突然頭ごなしにあのように罵倒されて、更には逃げ出されるなんて。

(なにが気に入らないのか、言ってくれなきゃ分かるはずもないじゃないか)

 歩くにはいささか長い道のりを、赤城は彼女のことだけを思いながら歩いた。どちらにせよ、姫を外へ連れ出しておいて一緒に帰還しなかった時点で自分は何がしかの罰を受けるだろう。最悪謹慎やら配置換えやらで姫から少し遠ざけられるかもしれない。

(まあ、それだってあと少しで終わりだ。むしろその方がいいかもな)

 

 


 城の中は浮き足立っている。あと一月足らずで姫の結婚式が行われるのだ。
 姫は隣国に嫁すため、正式な結婚式は隣国で執り行われるのだが、それではこの国の祝いにならないだろうと言うことでこちらでも式を行うことになっていた。もっとも、正式なものと比べればだいぶ略式ではあるのだが。
 それでも、めったにない一大行事には変わりない。城をあげての準備に誰もが追われていた。

 もちろん主役である姫が最も多忙な日々を送っている。
 そして姫付きの騎士である赤城も同様だった。
 あの一件以来、へそを曲げた姫はいまだに赤城とは口を利かないでいる。短くはない付き合いだがこれほどまでに強情になる姫を赤城は初めて見た。
 気になってはいるのだが、しかしお互いさまざまなことに忙殺されて話などする時間を取ることは出来なかった。

 赤城の耳に入ってくる噂は相変わらずだった。「姫様には別に好きな人がいるから、結婚にはあまり乗り気ではないようだ」という。
 こちらも赤城には気がかりな話だった。真偽も分からないがもし真実だったら、これから彼女は幸せになれないような気がしていた。

 そんなある日。

「はぁぁ……。つかれた……」

 ドレスの試着数着分が終了し、姫は広いソファに体を預けた。朝からずっと立ちっぱなし、着替えっぱなしでやることといったら腕をあげたり下げたり、せいぜいその場で回るくらいで何も楽しいことはなかった。

「ドレスも自分じゃ見られないもの。あまり楽しくないわ」

 誰かが着ているキレイなドレスを見るのは楽しいけれど。
 そんなことを思っているとドアをノックする音が聞こえた。
 もう、次の予定かしら、と思いながら返事をする。もうここまで来ると今日自分が何をする予定になっているのか把握することは難しくなっていた。まるで工場の機械に流れているようにされるがまま、なすがままだ。

「はぁい。どうぞ」
「失礼します」

 入ってきた姿を見て体が固まる。

 

 

「赤城」

 途端に不機嫌そうな声音で姫はそっぽを向いた。
 赤城はソファの近くまで歩いてきていつものように事務的に告げる。

「自分も休憩中です。少し、お時間よろしいですか?」
「……話すことなんかないわ」
「自分にはあります」

 こういうところ、赤城ってすごく強情。わたしの言うことを聞かないのなんて赤城しかいないんだから。
 姫はそんなことを考えながら、でも彼の顔は見ない。

 この前言われたことを忘れない日はなかった。「最初から嫌だと思っていては愛するものも愛せませんよ」 つまりこの人はわたしに隣国の王子を愛せと言っているのだ。好きになろうと思えばあの王子様のことを好きになれますよと言っているんだ。
 わたしの気持ちも知らないで。

(好きな人に、別の人を好きになれと言われることほど惨めなことってないわ)

「噂を聞いたのですが。少々気になりまして」
「ふぅん……」
「それと。もうひとつは個人的な問題なのですが」
「珍しいわね、赤城はお仕事中にプレイベートを持ち込まない人だと思ってたわ」
「私も、そう思っていたのですが、そうもいかないみたいです」

 姫はようやくソファの上で寝返りを打って赤城のほうを向いた。いつもの調子と少し違うのが気になった。
 いつも、無駄に自信満々で自分に出来ないことはない、っていうような顔をしているのに。
 それに、少し疲れているみたいにも見える。この人が何かを顔に見せるのは本当に珍しい。

 ここに来ようか来るまいか、赤城は大分悩んだ。しかしもう来てしまったものは仕方がない。あとは自分の納得が行くまで行動あるのみだ。
 ……どうせ、あと一月もしたら彼女はいなくなる。そうなれば自分だってもうどうでもいいのだ。

 ―― この子がいないこの城になんか勤めたって無駄でしかないのだから。

 それにしてもかなり疲れている様子に見えるのが気になった。お世話係はいったい何をやっているのか。こんなに疲れを顔に出させるのは良くない。たとえ疲れていてもどうにでもやりようですぐに元気になる姫様なのに。

「姫様にお聞きしたいことがあるのですが」
「なぁに? そのまえに、噂の話とあなたの個人的な問題はどうなったの?」
「その話をするんです。問題はひとつです」

 ……おそらくは。

「姫様には誰か心に思う男性がいらっしゃるのではないですか?」

 単刀直入に言うしか赤城には手段がなかった。どちらかと言えば回りから攻めていって外堀を埋めるように、そして逃げ場がないように誘導するほうが得意だったが。

「何でそんなことを聞くの?」
「質問に質問で返すのは良くない癖ですよ。直すべきだとは思いますが、……なぜ聞くかと言われれば、姫様に幸せになっていただきたいからです」
「幸せに? もし、好きな人がいると言ったら、お隣の王子様と結婚しなくても良くなるの?」
「姫様。私の話を聞いていましたか? ……あなたというひとは」

 
 もしそうなのだとしたら。姫は少しだけ考えた。赤城はわたしのお願いだったら何でも聞いてくれる。
 小さい頃からそうだった。口では「姫のためになりません」「人の上に立つ方は……」「いつまでも子供でいてはいけません」などなど、厳しいことばかりを言う人だったが、そう言いながらも彼は一番優しかった。
 赤城は最初からこの結婚に大賛成みたいな態度だったけど、わたしが嫌がってるって知ったら、もしかしたら……。

 姫はちらりと赤城の顔を見た。少し疲れているような顔をしているのはさっきから変わらなかったが、少しだけ優しい顔をしているように見えた。

「ねえ、そうだって言ったらどうするの? わたしが王子様と結婚したくないって言ったら」

 少しばかり期待を込めた口調で姫は言い募る。
 しかし次の瞬間、彼女が聞いたのは少し冷たい赤城の声だった。

「姫様。こればかりは私にもどうにも出来ません。けれど、私は姫様に幸せになって欲しいと思います。だから、王子様とご結婚なさって、幸せにおなりの姿を祈るだけです」
「……赤城。 冷たいね」
「冷たいとか冷たくないといういう問題ではありません。姫様というお立場であれば、仕方のないことだってあるのです。きっと王子様とご結婚なされば幸せになれます。姫様が思いを寄せている方がどこのどなたかは存じませんが、その方と結ばれるよりも」

 今までの自分というのは今このときのために培ってきたのではないか。と少し大げさなことを赤城は思った。
 我ながらなかなかの演技力だ。心にもないことをすらすらと口に出来る神経の図太さを持ち合わせていて良かった。

 心が冷え切ったようになっていた。そんなことは、姫に正式に婚約者が決定した時からそうなのだが。もう本当に、どうにでもなればいい。早くどこかへ行ってくれよ。 ―― そうすれば、僕は楽になれるんだから。

「帰って」
「はい?」
「赤城にそんなこと言われたくないの。そういうこと言うんならもう、出て行って。もう、顔も見たくないから!」

 どうして、どうして、どうして! 赤城に言われるのが一番辛いのに、よりによってその本人がどうしてそんなに意地悪を言うの!
 姫は泣きたくなる気持ちをぎゅっとこらえて立ち上がると、赤城の胸をドンと押した。

 思いがけない衝撃によろり、と後ずさりして、それでも赤城の顔に動揺はなかった。
 僕は一体何をしたいんだ。もう会えないから、最後の思い出に姫には笑っていてほしいのか。それとも、僕ではない男のことを好きで、僕ではない男のところに行ってしまう貴女のことなどもうどうでもいいのか。どちらでもないようであり、どちらとも自分の願いのような気もする。

「……幸せに、なってほしいんです」

 赤城は姫の手を取った。
 幼い頃はよく、二人手をつないでどこへでも行った。本当の兄弟のように、一緒に眠ったり、遊んだり、時には喧嘩をしたり。
 赤城の方から姫に触れることがなくなったのは、いつのころからだったか、姫は忘れてしまった。ただ、気がつくと年上の兄のような存在だった彼が、「一番気の許せる騎士」としてしか接してくれなくなったのを寂しく思っていた。 

「もう、会えないんだから。僕の思い出の中で、想像の中で、今までもこれからも、ずっと君には笑っていてほしいんだ」

 少し年の離れた妹のような存在から、それ以上になってしまったときに赤城は自分の心を胸の奥にしまいこんだ。それ以来、わざと彼女には少し距離を置いて接していた。それでも彼女が変わりなく自分を頼りにしてくれるのを嬉しく思いながら、しまいこんだ心が大きく育たないように気をつけていたつもりだ。

「だから、もう最後なんだから、笑っててくれよ。君とこんな風にお別れするのは嫌だ」

 そんな風に言われても。だって、赤城はわたしのことなんか全然考えてくれてない。自分のことばっかりで……。わたしが誰を好きなのかなんて、考えたことないんだわ。
 最後まで、わたしの初恋はその存在すら知られずに終わるんだ、と彼女はそんなことを思った。
 目の前にいる大好きな人は、笑ってくれと言うけれど、そんなことできるはずもない。

「幸せに暮らしてる、って思ってれば僕はそれで満足だ」
「幸せになんか、なれない」

 姫はぼそりとつぶやいた。赤城の望みならば、叶えてあげたいけれど。

「幸せになんかなれないよ。だって、……だって、わたしは赤城のことが好きなんだから!」

 そう言うと、姫は赤城の手を振りほどいてまたソファに逆戻りした。そのままぼすん、とソファにダイブして、大きなクッションにすっぽりと顔をうずめる。

 とうとう言ってしまった! 言ったら迷惑になる、赤城が困るだろうって思っていたから絶対に言わないでおこうと思っていたのに。言わないまま、結婚しようと思っていたのに。
 それもこれもみいーんなみーんな、赤城が悪いんだから! 赤城が、幸せになれとか無理なことを言うから!

 息が苦しくなるくらいクッションをぎゅっと抱きしめる。むしろ赤城が何も反応を示さない事のほうが怖い。やっぱり、迷惑なんだ。
 そんなことを取りとめもなく思っていると、ようやくのことで赤城の声が聞こえた。

「姫……、こっち向いて」

 彼女がクッションから顔を離してそちらを見ると、声の主はソファの脇に膝をついて座っていた。目線を合わせようとしてくれていることはすぐに分かった。
 ぼぼぼ、と顔が赤くなるのを感じる。隠している時は打ち明けてしまいたいと何度も思ったけれど、こんな恥ずかしい思いをするんだったら隠しておいたほうがまだ何倍もマシだったわ。

「ずいぶん簡単なことに今まで気がつかないでいたんだね」

 きっと僕たちは幸せになれる。赤城は既に確信していた。こんな顔をするほど好かれていたのに今まで気がつかずにいられたほうが不思議なほどだ。
 彼女がこの国のお姫様だとか、本当は触れることすらためらうほどの身分さであるとか、そういう堅苦しいことは今は赤城の頭の中から消し飛んでいた。そんなもの、後からこじ付けでどうにでもなる。
 彼女にお願いされて、僕が言うことを聞かなかったことが一度でもあるか?

「僕も好きだよ。……いままでごめん」

 近づくと、彼女が目を閉じたのでそれはもう了承の合図だと思うことにした。

 僕らはきっと幸せになれる。


2009/02/27 


 
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