厨二病全開の話

思えば、一番最初にかいたオリジナルキャラ（ファンタジーRPG設定だった）も、こんな感じの厨二病キャラだったなぁ、不幸にすればいいと思っていた……みたいな黒歴史の扉が開いて痛いんですが、
あれからもうン十年もすぎてなお、まだ黒歴史が続いているとても残念な大人です。

前回の記事で書いた、淋しい音羽くんの話。

　どうしていつも僕はこうなんだろう。
　何もしていないつもりなのに。どうしてか周りにいる人たちに迷惑をかけてしまうらしい。
　僕にはそれが分からないから、いつも誰かに怒られたり怒鳴られたり、そっぽを向かれたりして、それでようやく気がつくんだ。

（また、やっちゃったのかな）

　秋も深まってくるころ。夜になりかけのこの時間の風は少し冷たい。露出の多いステージ衣装を着ていれば、なおさらだ。
　この服も、あとどれだけ着れるだろう。割と、好きだったんだけどな。


　昼間、霧島くんにいわれたことを思い出していると、少し前の記憶がよみがえってくる。
　あれも、そう言えばこんな時期だったような気がする。よくは覚えていないけれど。




「あんたのせいで、みんながダメになるの。分かってるの？」

　あの子は、黒くて細い髪を耳の後ろで二つむすびにしていたっけ。それはとてもきれいな髪で、僕は彼女の髪は好きだった。

「分からないけれど、僕が悪いの？」
「そうよ。そんなことも分からないの？」
「うん、ごめん」

　謝ってもらったってダメなのよ、と彼女は言った。
　あの時、僕はなにをしてしまったのだろう。実のところ今でも分からない。こういうことが何度かあって、その全部が分からないままにただ、流されるように今までを過ごしてきて。
　だから僕は、いつまでたっても空っぽのままなんだ。





（あの時は、どうしたっけ。もう、あそこに行くのをやめたんだったっけ）

　あいまいな記憶をたどってみても、明確な答えは見つからない。だって、僕の中にはっきりとしたものなんて何一つないんだから。
　建物の屋上から見下ろす町の景色はとてもきれいで、大きくて真っ直ぐな道路を走っていく車のライトがびゅんびゅん流れて行く様子は見ていて飽きなかった。

「シン、お前の問題は、3 Majestyの問題だ」

　僕、割と3 Majestyが好きだったんだけどなあ。
　霧島くんと魁人が好きだった。三人で、3 Majestyをやるのが好きだった。空っぽの僕に、歌うこと、踊ること、仕事をすることの楽しさを、仲間と過ごす毎日を、食べることの幸福を教えてくれた、二人。

（ちゃんと、やっていたつもりだったのに）

　好きな二人に迷惑をかけていたのかもしれない、と思うと胸が苦しくなった。こんなふうに感じるようになったのも、二人と一緒に3Mjをやりだしてからだ。

（離れたく、ないなぁ……）


「おい、音羽」
「えっ……あっ、……不破くん♪」

　風が強かったし、周りも暗いし、それに急に声をかけられて驚いて振り向いたんだから、多分気付かれなかったと思う。
　でも、不破くんはあの子のように表情が豊かでもないし、思ったことを口に出しちゃうような子でもなかったから、それに気がついたかどうかは表情からはうかがえなかった。

「そろそろ本番だぞ。こんなところで何やってんだ」
「ああ、うん。もう戻るよ……」
「…………音羽」
「うん？　なに」
「いや」

　不破くんはそう言うときゅっと口を結んだ。「X.I.Pセンターの不破」の顔だった。

「行くぞ」
「うん」

　不破くんの後ろから屋上をあとにするとき、　霧島くんとカイト、怒ってるかなあ。とそんなのんきなことだけが気になった。