恋煩い日記
2012年は毎日何かを書こう、という目標のもといろいろな創作をするブログになりました。
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幼馴染組
ふたりのヒミツ 不破、神崎のイベントを見ての感想というか、なんとなく書いておきたくなったので。
想像と妄想。
想像と妄想。
食事の時間は、いつもバトルだ。普段からそうだけど、今日みたいにニクがメニューにあるときはことさらに。
「それ、ボクのーっ!」
「さっきおまえ一個取っただろ」
「わーん、あたしのがないー」
「自分で獲れよ、自分でー!」
ちっこい組がギャンギャン騒ぐのも、いつものことだった。俺はチビたちを押しのけながら、自分のニクを皿に一つだけ確保することに成功する。そして、テーブルの隅っこに座ってるトールを見つける。
「トール、喰わないのか、ニクだぞ、ニク」
「べつに。そんなに好きじゃないし、ニクなんて」
「そうか?」
トールはいつもそう言って食事の取り合いに参加しない。だから、いつまでたってもガリだしチビなんだ。一度そう言ったらむちゃくちゃ怒られたからもう言わないが、俺はそう信じている。
「めんどくせーじゃん、誰が取ったとか、取れないとか。オレ、あんなのにまきこまれたくねーし」
トールの皿には、全員に与えられるものしか乗っていなかった。それ以上食べたいものは大皿に載っているものを自分で獲る。それがここでのルールだった。
「……」
俺は黙って席を立って、またチビたちをかき分けると残っていたニクを一個皿に取った。ついでに、トールが好きそうな料理をいくつか。
「喰え」
席に戻り、ニクと料理をトールの皿に乗せてやると、トールはキッ、と鋭い眼をこちらに向けてきた。
「オレ、取ってくれなんてたのんでねーけど?」
「ああ、頼まれてねえな」
「じゃあなんで取ってくんの? オレ、そんなかわいそーな子に見えた?」
「いや」
「なんだよ! いらねーよこんなの」
「喰えよ。もったいねーだろ」
「勝手に持ってきたくせに……」
トールは憎々しげな眼をこちらに向けていたが、結局は箸を手にとって料理を口に運んだ。
俺はそれを見てそっと満足する。
同情とか、そんなんじゃない。優しくしてやったとか、そんなのに満足しているわけでもない。
トールが、本当は腹減ってて喰いたいのに、チビたちのために我慢してるのを、知ってたから。
俺には食事を取らないなんてそんなことできないが、トールにはそれができてしまう。その上、それを誰にも言わないし誰にも気づかせないようにしてる。メンドクサイとかそういう言葉でごまかして、斜に構えて、やせ我慢してるのを、俺は知っているから。
「トールのために持ってきたんじゃねえぞ、俺が取りたかったから取ってきただけだ」
「あーあ。ニクがもうねえって、チビたち泣いてんぞ。ケントが取ったから」
「……そうだな、俺のせいだな」
大皿の前でもう料理がないとチビたちがわいわい騒ぎだしたが、これもいつものことだ。今日はニクだったからか、いつもより少し騒がしい。
「……ありがと。いちおう、言っとくけど」
俺が自分の分の最後の一口を飲み込むと、同時に喰い終わったらしいトールが小さい声でそう言ったのが奇跡的に聞こえた。
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