恋煩い日記
2012年は毎日何かを書こう、という目標のもといろいろな創作をするブログになりました。
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しょんぼりレス子ちゃん
ときレス。
バレンタイン音羽1/3 をみて、すぐさまその先を先取りして捏造する、この妄想脳。
イベントの内容会話とかもちょっと捏造というか改変してます。すみません
バレンタイン音羽1/3 をみて、すぐさまその先を先取りして捏造する、この妄想脳。
イベントの内容会話とかもちょっと捏造というか改変してます。すみません
ランチタイムとデザートタイムの終わった店内は、これから始まるディナータイムまでの間だけ、ほんの少しだけ客足が途絶える。この時間は、いくらこの店でも空いていることが多いって、僕は知っている。
仕事がひと段落ついて休憩がてら訪れると、昼食にも夕食にも中途半端なこの時間になることが多かったってだけだけれど、ディナーの仕込みがひと段落すると、彼女が僕の相手をしてくれることが多いので嫌いではなかった。
一人で食事をするのは、少し苦手だったから。
「慎之介さん、おつかれさま」
「君もね」
「えっ、わたし?」
「この店、また模様替えしたんだね。きみって、意外と力持ちなんだ?」
「もうっ。改装は趣味みたいな感じなんです。今回は、バレンタインだからハートいっぱいな感じにしたんですよ」
「ああ、そうか。メルヘンの国みたいだなって思ってた」
彼女はその細い腕でこの店の中の家具をよく取りかえる。壁紙や、床板も簡単に変えられるような仕組みになっているのだといつか聞いたことがある。
僕は改めて店内を見回した。ピンク色のハートマークが目立つ、店内。
「お店も、事務所も、あまーい香りでいっぱいで、しばらくは夢みたいだなあ」
「ふふっ、慎之介さんには最高のイベントですね」
「うん」
僕は食後のミルクティーをひとくちのんだ。これもあまくて、とってもしあわせの味がする。
「事務所にもね、最近たくさん届くんだ」
「……?」
「世界は広いねえ。僕の知らないチョコ、いーっぱいあって、食べるのが楽しみ」
「そんなに、いっぱい?」
「うん」
「そう、なんですか」
……あれ?
食べ物の話をすると、彼女はそれの味についてとか、見た目とかをいろいろ聞いて来たりして、僕がそれを上手に伝えられるとじゃあ作ってみます、ってなることが多い。それは彼女が今の仕事をとても大切にしてて、大好きなんだなって分かるから、そういう会話をするのが僕は好きだったんだけれど。
彼女は予想していたのとは違った反応を見せた。そして、僕は失敗したのだと悟った。
「……ねえ、オーダー追加。いい?」
「え……あっ。はい! かしこまりました!」
ああ。
どうやら僕は無意識のうちに、人を傷つけてしまうことが時々あるらしい。霧島くんや魁斗に時々注意されるけれど、無意識にやってしまうのだから直しようがない。
厨房に下がっていく彼女の後姿を見て、さっきまで感じていた幸せな気持ちがすっとしぼんでいくのが分かった。
失敗は、すぐに取り返さないと。
「お待たせいたしました」
「ありがとう」
追加オーダーは、最近メニューに増えた、『ホワイトショ……』えーと。……なんだっけ。呪文みたいなアレのほかにも、覚えられないメニューが増えてきた。とにかくケーキ。白くて、ふわふわで、大きくて甘い。
僕は彼女を向かいの席に座らせた。ちょうど他にお客さんもいない。少し渋る様子を見せた彼女に、「ほんのちょっとだけだから」とお願いする。彼女はこういうのに弱いって、僕は知ってる。
「さっきは、ごめんね」
「……? 慎之介さんが謝ることじゃないです」
「ううん、でもやっぱり、僕が悪かったとおもう」
僕は、3 Majestyのアイドルで、みんなの王子様。アイドルのときは、みんなに愛を降り注ぐし、常に平等に、時には刺激を与えてプリンセスたちを釘付けにしろ。そういうふうに隊長には指導されてる。それは変わらないし、最近はそういうふうにするのもいいものだなって思い始めているけれど。
けれど、僕自身はというと、みんなと一緒はすごく嫌で、好きな子には僕を一番に見てほしいし、特別扱いしてほしい。そんな風に思っていて。
とても自分勝手で、我儘なことだなあって、改めて思う。だけどそれが僕の本音でもある。
ナイフを持ってきてもらうのを忘れたから、僕は自分のフォークを、ずぶりとホワイトなんとかケーキに突き刺した。甘くて柔らかなホイップクリームの中にずぶずぶと銀のフォークが沈んでいく。
くるりと手を返し、ケーキをひとかけら、切り取る。とても不格好で形もおかしいけれど、彼女が作ってくれたものの味は変わらない。
僕はフォークをもった右手を、僕の行動をじっと見ていただけの彼女に差し出した。
「はい、これ。分けてあげる」
「慎之介さん?」
「食べて?」
ずい、とフォークを差し出すと、僕のしていることの意図が飲み込めていないながらも彼女は小さく口を開けて、ケーキを口に入れた。
……うん、予想通りかわいい。
「おいしい?」
「……どうでしょう? 美味しいと思って、作ってますけど……」
「すごく、美味しいよ、これ」
「ありがとうございます……」
今度は自分のためにケーキをフォークにとり、口に入れる。
ふわりと口にとろけるホイップクリームと、そのあとに残るスポンジケーキ。甘くて、少しだけ切なくて、とても幸せな気持ちが心に残る。
僕は、彼女のものは誰にも渡したくない。ひとり占めしたい。このケーキだってそう。全部自分のものにしたい。
それはファンからもらったチョコレートに抱く気持ちと同じようでいて、でも随分違っている。
でも、君となら分け合いたい。僕だけのものを、君になら分けてあげたいと思う。
ケーキを食べる僕のことをじっと見つめている彼女に、この気持ちをどう説明したらいいんだろう。
どうやったら、こんな気持ちを分かってもらえるだろう。
僕にはまだ、それだけのチカラをもつ魔法を使うことができないから、こうしてケーキを二人で分け合って食べることくらいしか、できないでいる。
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