魔法使いのおとわくん

VSライブLmT、イベントもクエストもたくさん入ってて盛り上がることこの上ない！
今の私、テレビも雑誌も漫画も、何もかもに優先してときレスが最上位に来るくらいにハマってます。

というわけで、書くものもときレスが多くなるのは当然だよね。

注意）　「職業アイドル」な音羽くんを書いていたら思っていた以上に性格が悪くなってしまいました。
天使で王子でスイーツな音羽くんじゃないとダメ！　っていう方は見ない方が無難です。







（魔法使いの音羽くん）


　僕は、王子様。王子様は、みんなを幸せにする魔法が使えるんだ。

「音羽くん～。会いたかったよ～」
「うん。僕も」
「本当～！？」
「本当だよ。君に会うために、お仕事だって頑張ったんだ」
「きゃーーー！！　うれしい！！！　音羽くん、だいすき！」

　女の子は可愛くて、やさしくて、そして、僕なんかの魔法に簡単に引っかかってくれる。
　「お前ならきっと、理想の王子になれる。お前が必要なんだ」そんな風に言われて、僕でも何かができるのかなって思った。彼と一緒に食べたドーナツは本当に幸せの味がして、僕もこんなふうに誰かにとってのドーナツみたいになれるんだよって言われて、それを僕は今でも信じて、こうしてアイドルをやっている。
　やってみると実は結構楽しくて、実を言うと割とこのアイドルってやつにはまりつつある。
　こうして仕事をして一日一日を過ごしていくのもいいものだなって、最近は思い始めたところ。
　僕の魔法は、今のところはまだ健在。女の子たちは大抵笑顔になって、その嬉しそうな顔を見ると僕だってやってて良かったなって、それくらいは思う。
　僕にとってはそういうことは実は簡単なことで、こんな単純なことで喜んでくれて僕を好きになってくれるなんて、ある意味馬鹿みたいで本当にかわいい子たちだなって、笑ってしまうよ。

「ねえ、今度のVSライブでも、僕のこと応援してくれるよね？」
「うん！　もちろんだよ！　もう、貯金下ろしてでも大阪と名古屋まで行くからね！」
「ありがとう、でも、無理はしないでね？」
「音羽くんこそ、怪我とかしないようにね」
「うん、ありがとう、やさしいんだね」

　ほら、こんなふうにしたら喜ぶんでしょ。こうしたら、幸せなんでしょ？　全部分かってる。
　僕は王子様だから、みんなを幸せにする魔法をかけてあげる。
　ねえ、呪文みたいな名前のアレ、一緒に食べよう？

　フレレクラルラ、フレレクラルラ。甘いホイップとフレンチクルーラー。冷たいアイスと一緒にどうぞ。

「音羽くんにずっとついて行くからね！　ライブ、がんばってね！」
「うん、ありがとう」

　ほら、これでこの子も僕の虜。
　こんな王子様、君は本当に望んでいるのかな？


　笑顔の女の子を見送って、振り返ると霧島君とカイトがそこにいた。

「シン君、すごいな」
「え？　なにが？」
「今のだよ。俺、あんな風に上手くファンの子あしらえない……」
「シンは狙ってあれができるところが強みだな。俺も見習うべきところだろう」
「それって……褒められてる？」

　僕が尋ねると、二人同時に真顔で頷かれてしまったから、思わず吹き出してしまった。

「あはは。二人して真面目な顔して。変なの」
「ちょっ……シン君が聞くから、答えたんだろ！」
「変なはずはないだろう。心外だな」
「ふふふ。まぁ、いいか」
「よくねーし！」
　

　
　僕はあの時ドーナツを初めて食べて、本当に幸せな気持ちになったんだ。
　だから、ドーナツになりたいなって、単純にそう思った。そうしたら、僕も幸せになれるんじゃないかって。
　でもね、ドーナツは真ん中にぽっかり大きな穴があいてるでしょ。
　その穴がね、なにをしても埋まらないんだ。仕事をするのは楽しいし、歌うのも、踊るのも嫌じゃない。みんなで何かを作り上げていくのって、ちょっと馬鹿みたいだけど、それ以上に面白いんだ。だから、僕の穴だってもうちょっとで埋まりそうだと思うのに、いつも何かに邪魔される。

　霧島君と、カイトと、それからあの子。
　みんなでいれば、もしかしたら、って。