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恋煩い日記

2012年は毎日何かを書こう、という目標のもといろいろな創作をするブログになりました。

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短い小ネタ3連発

何か書きたいけどネタがないよー! と乞食したらフォロワーさんがお題をくれましたありがたやありがたや。

テキスト書くのは好きなんだけど、たまにこうして自家発電できない時があるのでみなさまには大変感謝しています。

というわけで、私が書けるのはこんなかんじだよ!ありがとう!

「手放しの笑顔の京也さん」
「ハイソ霧島家次男司さんの日常」
「意外と花言葉とか知ってる透さん」

の三本でお送りしま~す。


「薔薇と貴公子」のイベントを見ている前提で進みますのでご了承願います。






(イケない女とダラシない俺)



(なーんで、あんなことしちまったんだろ)

 見慣れた天井を眺めながら、俺はぼんやりと昼間のことを考えていた。

 今日は事務所丸ごと招待されたガーデンパーティーでの仕事だった。仕事と言ってもいつものとはまるで違っていて、X.I.P.としての活動はほぼ無く、招待客たちへの挨拶やら世間話で腹の読み合いやら、そんなことばかりだった。当然、うちの野獣どもは不得意としている分野であり、二人を引き連れて三人分の応対をするのが必然的に俺の役割だったというわけ。
 著名人が集まっているだけあって、テレビ雑誌芸能関係のお偉いさんと言われているような、普段顔を見ることができないような方々に顔を売り込むことくらいはできたとおもう。まあ。参加した甲斐はあったと思いたい。
 そんなわけで体は疲れているが、頭のほうは冴えわたっていて、帰って来てから早々にベッドに横になったもののまだ眠れそうになかった。

 原因は分かっている。パーティー終盤のサプライズのせいだ。

**

 ゴアイサツと作り笑顔が続いて、いよいよ野獣どもが飽きてきた。

「なーキョウヤさん。いつまでこれやんの。俺もう疲れた」
「ニク、喰っていいか」

 首元のネクタイをゆるめながら甘えた声を出すトオルさんと、テーブルに並ぶ肉料理ばかりを眺め始めた剣人先生。
 かく言う俺も、いささか疲れてきた。

「ん。じゃあ一旦休憩、フリータイムにしますか」
「やった!」
「けど。あんまり羽目外すんじゃねーぞ、みんな見てんだからな。俺もそこまでフォローしきれないからな?」
「分かってるって! 剣人、行こうぜ」
「おう」
「くれぐれもお行儀よくするんだぞー」
「へいへい!」

 ウキウキと立食パーティーのテーブルに向かって行った二つの背中に声をかけて、俺もほんの少しだけネクタイを緩める。
 さてと。実を言うとこういう屋外のビュッフェ形式って得意じゃねーし。お得意さんの前だったから少しは料理を口にしたし、マズいと感じたわけでもなかった(むしろウマいと思ったけれど)。しかし今は剣人先生のように腹が減っているわけでもない。 
 少し人が少ない場所にでも行こうかと周りを見回して、ある一点で視線が止まった。

「……悪い子ちゃん?」

 見間違えようにも、間違えようがない、あの後ろ姿。
 ツカツカと俺はその後ろ姿に近寄り、後ろから小さな手をつかんだ。少し乱暴かとも思ったが、実際のところ、そんなことに構っている余裕はなかった。

「きゃっ!!」
「ゴメン。けど、ちょっとだけ付き合って」
「き、キョウヤさ……むごっ」

 大きな声を出しそうになる悪い子ちゃんの口をふさぎ、その手を取って歩きだした。人気のない方へと。


**

(引き返せないって、分かってたのに……あーあ)

 悪い子ちゃん。
 普段冗談めかして読んでいる彼女のあだ名が、まるで冗談じゃなくなっているのに気がついて。

 あの時、俺は最高にダラシない顔をしていたに違いない。けれどその時俺に全く自覚がなかったのだからたちが悪い。

「京也さん、そういう顔していると、子どもみたいだね」
「……えっ?」
「ああ、いま、携帯持ってないのが悔しいなあ。写真に撮りたかった、今の顔」
「や、やめろよ!」
「えへへ。持ってないってば。そんなに焦らなくても」

 撮られるのもお仕事で慣れてるでしょ? と平気な顔で言う彼女の前で、俺は片手で顔を覆っていた。
 今、俺はどんな顔をしていた? ダレの顔をしていた? まったく覚えていない。彼女の前では真っ白になってしまう。


(覚悟を決めなきゃなんねーな)

 引き返せないとこまできちまってる。
 彼女の顔を思い出して、静かに心に言い聞かせた。







(別世界の王子様)
※まだ確定はしてないけど、どっちかというと霧島レス子ちゃんです。魁斗ごめん




 本日の戦略ミーティング。17:00より、いつものレストランにて。

 集合時間の少し前に、辻魁斗は既にレストランに到着していた。ディナーよりほんの少しだけ早い時間で、オーナーの彼女と先日のガーデンパーティーの思い出話などをのんびりと楽しむ余裕があった。

「楽しかったし、料理もうまかったけどやっぱりちょっと、別世界って感じだったよな、俺らには」
「うん。そうかもね。まさか生演奏で社交ダンスまで始まるとは思わなかったよ」
「あはは! でも、あの時のお前はちゃんと可愛かったよ」
「もう。魁斗さんが強引だからだよ。恥ずかしかったんだからね」
「まあいいじゃん」

 魁斗が好物のジンジャーエールのグラスをストローでかき回すと、氷がカランカランと涼しい音をたてた。
 仕事で呼ばれた先日のパーティーは挨拶ばかりで楽しむ余裕もないものだったが、後半彼女の姿を見かけてからは魁斗にとって楽しい思い出となった。

「しかし、霧島くんには驚いたよな~。あんな派手な登場するとは思わなかったし。お前もだけど」
「やだ、もうあれは忘れてよ」
「ハハッ、無理だね」

 魁斗が言っているのはパーティーの終盤、どこかへ姿を消していた霧島司が彼女を伴って立食パーティー会場へ戻ってきたときのことだった。
 白の正装をキチッと着こなした彼は、まさに英国紳士と言っても差し支えのないようなハマり具合でパーティーが始まる前から評判でもあったのだが、その彼が白毛の馬に乗ってしかも、女性を胸に抱えて登場したのだから参加者の注目を浴びないわけがなかった。

「にしてもさ。霧島くんってすごいよな。あの服が似合っちゃってるだけでもすげーのにさ」
「本当。素敵だったなあ……」
「あ。なんかちょっとムカつくな。まるで俺は眼中なしかよ?」

 あの日の霧島のことを思い出したのか、表情を緩めて彼女は夢を見るように空中を見つめる。
 魁斗はちょっとからかってみただけだったが、彼女は思いのほか慌てたようだった。

「そんなことないって! みなさん素敵だったけど、でも司さんはちょっと別格って言うか……」
「ごめん冗談。俺もそれには同意するよ。あの服、俺には絶対似合わないもんな」
「そんなことないですって。魁斗さんも、慎之介さんもとっても素敵だったよ?」
「はは、サンキュ」

 魁斗が笑うと、彼女もほっとしたように笑顔を見せた。魁斗は、それだけで十分だと思った。

「馬に乗れるとかさ。俺もはじめて聞いたんだよ。霧島くんかくし芸多すぎ」
「へえ。そうなんですか。本当、びっくりしました」
「子どものころからやってたって。たしなみ程度だ、なんて本人は言ってたけど、乗馬をたしなむってな」
「どういうご家庭なんでしょうね。私には想像つかないなあ」
「俺も」

 3Mjの中では一番「ごく一般的」な家庭で育ったと思っている魁斗は、その点では彼女に一番近いはず、と思った。少なくとも魁斗は子どものころに乗馬を嗜んだことはないし、彼女もそうだと思っている。

「ほかにもさ、将棋と同時にチェス覚えたとか、自宅にワインセラーがあるとか、話聞くとすげーんだ、霧島くんち」
「へぇ―。すごいです」
「かと思えば空手はめちゃくちゃ強いし、趣味はリー先生の映画観賞だしな。霧島くん、ホント分かんねえ」
「ふふ……あ。噂をすればですよ。司さん、いらっしゃいませ!」

 カランコロン、とドアベルが鳴り出入り口に目を向ければ、件から噂の霧島司が店に入ってきたところだった。今日は、よく見かけるカジュアルな私服姿で、小脇にタブレット端末を抱えている。

 彼女は魁斗のそばから離れ、走るよりはゆっくり、歩くよりは素早い速度で霧島に近づいて行った。
 その後ろ姿を見るに、お姫様の心を射止めるのはやっぱり本物の王子だなあと魁斗は思う。
(まっ、お似合いだし)

「お待ちしてました。今、魁斗さんと、司さんのお話をしていたんですよ」
「俺の? またなにかからかっていたんじゃないか?」
「そんなことないです。ふふふ。ご注文は? いつものでよろしいですか?」
「ああ。それと、そうだな。薔薇風サーモンのカルパッチョも頼もう」
「ありがとうございます。ごゆっくり」

 こちらに向かってくる霧島の姿を見ながら、キッチンに戻ろうとする彼女に「ジンジャーエール追加で!」と魁斗は声をかけた。

「かしこまりました!」

 こちらを振り返ってそう答える彼女は、やっぱり可愛くて。諦めきれないなあ、と魁斗は思うのだった。









(可愛い人に愛の告白)





 

「あの……」
「はい?どうかなさいましたか」
「えっと」

「どうかなさいましたか」だなんて声をかけられたことは今まで生きてきた中で一度もなかったから、神崎透はそれだけでかなり面食らった。
 そうでなくても、こんなところで知らないヒトに自分から声をかけるのなんて緊張している。そういうのは今までは剣人にほとんど任せていたし、ごく最近ではキョウヤさんの仕事だった。
 けれど、今ここにはそのどちらもいない。剣人は自由時間だと言われた瞬間からビュッフェスタイルの立食パーティー会場から動かないし、京也さんはふと目を離したらどこかに消えてしまっていた。
 仕方ないから、今は自分で伝えなければならない。どちらにしろ、二人がいたところでこんな恥ずかしいこと、頼めるわけがなかった。



(ヘヘッ。ここんちのヒト、気前いーな。好きなだけもってっていいだなんて、俺が999本持ってく奴だったらどうしてたんだろ)

 透は上機嫌で、広いバラ園の中を歩いていた。
 よく手入れされたバラたちは色も種類も豊富で、しかしほとんどすべてが今が見ごろとばかりに咲き誇っている。透は薔薇の種類などは良く分からなかったし、ここは公園や植物園と違って品種の名前の書かれた立て札などもない。目的のものは色で選ぶしかなかった。

(そうだなー。やっぱり俺だし、紫?)

 てくてくと歩いて、濃い紫色と薄い紫色の花を見つめる。
 上品、気品、尊敬。
 透はブフッと吹き出して、足を進める。ないない。

 次になんとなく目に留まったのが、X.I.P.の他のメンバーの担当色だった。

(まあ、ないけど)

 青い薔薇は自然界には存在していないと聞いている。奇跡、神の祝福? 青みがかった紫色のような、爽やかな色は、やはりみているだけで剣人を思い出させる。
 黄色の薔薇はそこかしこに見られた。なぜか目立つような気がして透は少しだけ笑う。可憐、爽やか。友情。……友情、ねぇ。

 やっぱりX.I.P.のメンバー色はない。わざわざそんなことをする必要がない。

 薔薇園の中でも一番数が多いように思えるのが、赤いバラだった。垢と言えば、あの癪に障る器チビの色だ。それだけでもまず選択肢に上がるわけがない。なにより、ありふれすぎていて面白くもなんともない。情熱。模範的・熱烈な恋。……暑苦しい。アイツを思い出すからゼッタイナシ。

 思い出しついでに、ライバルチームのリーダーの色は何だっけかと思う。そうだ。白。
 白いバラは、緑色の葉に埋もれるように、しかし他の何物も寄せ付けないようにそこにあって存在を主張していた。清純、純潔、素朴、尊敬。
 堅い。あのリーダーそのまんまじゃん。

(いいの、ないなあ)

 決めあぐねながら透はふらふらとバラ園を歩きまわっていた。
 すると、淡いピンク色のバラが大量に植えられている場所を通りかかった。

(ピンクか)

 透はにっこりと笑った。
 そして、その株をじっくりと見て回り、特にきれいに咲いている花をゆっくりと選び始める。
 時間をかけて、何度も同じところを見て回り、透は咲いている花を3本、つぼみを3本選び取って、満足げにふう、と息を吐いた。

(今日さっそく持ってこ。あいつ、どんな顔するかな)

 さっきからずっと心の中で思っている顔をもう一度思い出し。透は誰も見ていないのをいいことに崩した笑顔を戻すことはなかった。





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