コートを脱いだら出かけましょう

拍手ぱちぱちたくさんありがとうございました！
大変うれしいです。はしゃいじゃいます。
次も早くお届けできるように頑張ります。

それにしても、赤城と雪ちゃんはほとんど出会うことがないから、
どれだけ時が進んでもいつまでたっても「会いたいな、会いたいな」とお互いに思っているだけ
の話になってしまいます。
それがいいのだけども。



さて、続きは佐伯さんの小ネタ。
修学旅行で、みなこちゃんと。

（ウチの佐伯デイジーは、天原みなこちゃん　といいます）



「佐伯くんっ！」

思い切って声をかけると、佐伯くんはぐるりと振り向いた。

「……あのな。学校じゃないからって大きな声で呼ぶなって、いつも言ってるだろ」
「わぁん、ゴメンね、ゴメンね！」
「まったく。何度いっても分からない奴だな。お前の脳みそはニワトリよりも軽いな、きっと」
「そんなことないもん」
「……で？」
「えっ？」

べちべちべち、とチョップしてきていた手をぽすん、と私の頭の上に置いて、佐伯くんがこっちを見下ろしてくる。いつもの、ちょっと不機嫌そうな顔で。

「だから。なんか用があって、わざわざ呼びとめたんだろ？」
「あっ……そうだった。あのね。佐伯くん一人みたいだったから、修学旅行の思い出づくり一緒にしようと思って」
「……はぁ？」
「ねぇねぇ、佐伯くんどこ見た？　金閣寺いった？　清水寺行った？」
「行かないよ。せっかく、まとわりついてくる女どもを撒いたんだ、人ごみには行かない」
「ふぅーん……」

でも、そうしたらせっかく京都に来たのに京都らしいところを一つも見られないんじゃないのかなぁ。

そう言ったら、「別に、いいよ。見たかったら修学旅行じゃなくて個人的に来るし」佐伯くんはちょっとだけ上を見ながら、吐き捨てるようにそう答えてくれた。

でも、それってやっぱりちょっと悲しくないかなぁ。修学旅行って、一回しか来られないのに。
お友達と遊んだり、おいしいもの食べたりするの、佐伯くんは楽しくないのかなぁ。

さっき上を見上げたままの佐伯くんのことをじっ、と見ていると、ふいに視線が降りてきた。

「……いつまで見てんだよ」
「え？　……なにが？」
「自覚なしかよ……いいから、ちょっとこっち来い」
「えっ、えぇぇっ！？」

ぐいぐいと腕を引っ張られて、歩いていた大通りから一本離れた路地につれてこられてしまった。

「佐伯くん？」
「思い出作りとか、別にどうでもいいんだけどさ」

「そんなに高校生活に期待してないし」　そうやって佐伯くんは、プリンスじゃない顔でそこに立っていた。
プリンスの時の佐伯くんはかっこよくて、優しいけれど女の子に囲まれていて近づけない。だから、わたしはどっちかっていうとこっちの佐伯くんのほうが好き。人魚を迎えに来てくれるとき、こっちの佐伯くんだったらいいな。

「まぁ、お前の思い出づくりくらいには、付き合ってやらないでもない」
「……？　つまりそれって？」
「あぁ！　物分かりが悪い奴だな、今からどっか一緒に行ってやるって言ってるんだよ」
「……！！」

ホントに？　って聞くのはやめといた。天の邪鬼な佐伯くんだから、「やっぱりやめた」とか言いかねないし。
代わりに私はぴょんぴょんとびはねて、さっきそうされたように佐伯くんの腕をつかんだ。

「行こう！」
「ただし、人がいっぱいいるところはいやだからな」
「うんっ！　さっき、素敵なところ見つけたんだ～！」
「……やな予感がしないでもないけど。……まぁ、いいか」
「うん。まぁいいよ～。早くいこ！」

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あれ……？　こんなはずでは。

この後、佐伯氏は「太/秦/映/画/村」とかに連れて行かれて、時代劇の若様っぽいコスプレをさせられて「これなら佐伯くんてばれないでしょ？」とか言われて大いに後悔する、というオチ。

でも、美人さんなみなこちゃんのお姫様コスプレも見てしまったのでなにも言えない、というさらにオチ。