恋煩い日記
2012年は毎日何かを書こう、という目標のもといろいろな創作をするブログになりました。
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続いて
ホントに、人さまのお宅のお嬢様をどこまで妄想すればいいのやら
浴衣デート そのに。
大地琴子の設定での一雪と伊織ちゃんです。
伊織ちゃんはaikaさんところの赤城デイジー。
昨日の続き。そして、夜店とか和服とかの時代考証はあまり気にしない方向で
久しぶりに来た神社のお祭りは子供の頃の記憶とあまり変わっていなかった。
安っぽい出店、ちょうちんの明かり、お囃子の音、夏のむっとするような暑さ。
初めて来た伊織は、いつもの閑散とした神社の様子と今夜の違いに驚いた様子できょろきょろと周りを見回していた。
「伊織、りんご飴食べる?」
「えっ。あ、ありがとうございます」
すぐそこの店で買った、割り箸に刺さったそれを差し出すと伊織は笑顔で受け取ってくれた。
なんていうかさ、女の子とりんご飴って似合うと思う。僕はだいぶ前からずっとそう思っていたんだけど、小さくて丸い甘いお菓子と、好きな女の子の笑顔っていうのはだいぶいい。実際に見てみたら良くわかった。
僕はそれで気をよくして、その後も「もう、そんなに食べられないです」と言われるまでいろいろと買い与えてしまった。
「一雪さんは、なんのお店が好きでしたか?」
「そうだなー、下らないのが好きだったよ。ほら、くじ引きとか」
「あぁ、わたしも! 大きい景品がいつか当たるって信じてました」
「そうそう」
他愛もないことをしゃべりながら歩いていると、伊織がふと足を止めた。
「どうしたの」
「一雪さん見て。きれいね」
伊織が覗きこんでいるのは金魚すくいの水槽だった。
平たくて大きな水槽の中に、小さくて赤い、細い金魚がたくさん泳いでいる。
何人かの子供がその前にしゃがんで、金魚すくいに挑戦していた。
「やってみる?」
「うーん。……お家で金魚を飼っても平気かしら?」
「大丈夫だよ。僕か伊織の部屋で飼えばいいし、そんなこといちいち許可をもらう必要ないし」
「そうなの? 小さい頃、母に怒られたことがあって」
金魚の一匹や二匹や三匹、どうってことないよ、と僕は言い、伊織の背中を押して金魚すくいの屋台のおじさんに声をかけた。
「スイマセン、この子が一回やります」
おじさんからもらった金魚をすくい道具を手にとって、伊織は少々緊張した面持ちで子どもたちの横にしゃがみこんだ。
僕はその横に同じようにしゃがむ。なんとなく、伊織はこういうのあまり得意そうじゃないな、と予想しながら。
「わたし、あんまり上手じゃないんです……」
「そのほうが伊織らしいね、がんばって」
「うう……、緊張します……」
僕はなんだか微笑ましい気持ちになって、しばらく金魚と格闘する伊織を眺めていたのだけど、何度もすくおうとしてはためらい、ためらってはまた水につけたりしているうちに、まだ一匹もすくっていないのに道具の紙が既に破けかかってしまった。
おまけに、あまりにも金魚に夢中になるあまりに、伊織の浴衣の袖が水槽の水の中につかりそうになっている。
「伊織。袖、気をつけて」
「あぁっ。……ごめんなさい……」
「別に謝らなくてもいいよ、気をつけてくれれば。ていうか大丈夫? 一匹もすくえないんじゃないの?」
「うう……だから苦手だって言ったじゃないですか」
それでも伊織は「がんばります」と一言言って、ようやくそーっと一匹だけ金魚をすくい上げることに成功した。
「一匹だけかぁ……」
「仕方ないよ、伊織、あんなおっかなびっくりなんだもの」
「ひとりじゃあ淋しいよね……きんぎょさん」
一匹だけ(敢えてこういう表現をするけれど)伊織に選ばれた金魚は、他のとは特に変わりがない赤くて小さくて細い金魚だった。
彼女が今何を考えているのか、なんとなく僕は分かったけれど、だから別に何かしなければいけないというわけでもないな、と思った。伊織はきっと今幸せでいてくれてるだろうし、それならば安心なんだろうと僕は考えた。
「帰ったら、金魚鉢を探さないとね」
「おうちにあるかしら」
「多分、あると思うよ」
「ふふ。家族が増えちゃった」
ほら。
楽しそうに笑う伊織の顔を見て、僕はさっき考えたことは正しいだろうと確信した。
それは、僕にとっても伊織にとっても幸せなことに違いなかった。
伊織ちゃんがよくわかってなくて、こんな感じでいいのかなあと思いながらでも書いてしまう悪い癖である
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