おはようございます！

ツイッターのフォロワーさんが「赤城があいさつ運動をしてたら……」というpostをしていたのにつられて、
赤城のあいさつ運動についての妄想が止まらなくなった結果。

（おはようございます！）
・はば学であいさつ運動が始まったのは、たしか赤城がいきなり急先鋒になったからだったよね、というドラマCDネタから。




「おはよー」
「遅いぞ。お前が最後だ」
「えっ、本当かよ。っていうか、赤城、マジで来てるんだな」
「どういう意味？」
「こういうの、なんかバカにしてこなさそうじゃんおまえ」
「失礼な。決まったことは粛々とこなしますよ僕は」
「粛々と……ね」

苦笑交じりの同級生を置いて、僕はさっさとほかの生徒会役員と一緒に生徒会室を出た。
時間は朝の7時、3分前。始業時間よりだいぶ早い校内には、熱心な部活動の生徒以外ひとけはなく、静まり返っている。
朝の光のなか、僕たち生徒会役員3人は歩きだした。校門に向かって。
これから、はばたき学園初の「あいさつ運動」が始まるのである。




こういうことは、演技みたいなもんだと友達（……知り合い？）が言っていた。
その気になれば優等生だってプリンスだって何だって演じることができる、それをはずかしいと思うのは、自分に覚悟が足りないからだって。覚悟があれば、そんなのどうってことないって。

（……そういうものかもしれないな）

ぼんやりと思う。
やる前は……というか、生徒会で議題にあがったときは、自分が朝早く校門の前に立って、にっこり笑って他の生徒に
「おはよう！」だなんて恥ずかしくてやってられないと思った。バカバカしいし、面倒くさい。
けど、そうだな、なんとなく今なら彼の言っていたことも、そしてもう一人の友達が言っていたことも分からなくはない。
要するに、僕はなんとも中途半端だったのだろう、多分。

「おはようございます」

登校してくる生徒たちに声をかける。
生徒会執行部の腕章もしているし、横にはこの前配ったあいさつ運動開始のお知らせポスターも貼ってある。
いきなり校門でおはようと言われた生徒たちは一瞬びっくりしたような表情を見せるが、それらを見ると「ああ、」と思いだしたような顔をして、遠慮がちに「おはようございます」と返してくる。
そんな様子を見て、まあ、初日にしては反応は上々かな、と僕は一人結論を出していた。
ビデオで見せてもらったはね学のあいさつ運動の様子にはまだ遠く及ばないが、あちらはこっちよりも長くやっているのだから差があるのは仕方がない。

「おはようございます」
「あー。ユキー。なにしてんの？」

やってきたのはクラスメイトの女子たちだ。

「生徒会のオシゴト。ほらさっさと教室行く。おはようございます」
「あはは、変なのー」
「笑いごとじゃないって」

その間にも次々と登校してくる生徒がいるので、彼女の相手ばかりはしていられない。

「ていうかユキ、もうちょっと楽しそうにやったら？　それかさ、元気よくするとかー。なんかつまんなそうじゃん」
「別に面白くてやってるわけじゃないし、こんなの好きでやってる奴がいたらそれこそ変態だろ。おはようございます」
「えー、なにそれ」
「オシゴトだって、いってるだろ」
「嫌々やってんの？」
「いやだったらそもそもこんなに早く登校してないよ」

なにそれわかんない、変なの。と言いながら彼女は教室のほうに歩いて行った。

ま、分かりにくいかもしれないけど。
「挨拶するのは悪いことじゃない、むしろいいことだからみんなでやってみるのはどうだろう」って、彼の言いたいことは少しわかったかなあという気がするんだ。
やってみてわかったことは、特に悪い気はしないってことだ。

……僕には、彼みたいに爽やかな朝の挨拶はできそうにないけれどね。