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恋煩い日記

2012年は毎日何かを書こう、という目標のもといろいろな創作をするブログになりました。

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学園パロ

「ドラマチック!青春!」 の学園設定が楽しすぎたので、こんな感じの話を。





(謎多き美少年)




 昼休み。教室に戻ると、僕の席に他の奴が座っていた。前の席の不良(クラスの中でも派手で、目立って、うるさくて人気がある奴)と何か馬鹿みたいに大きな声でしゃべっている。

(……)

 どいてくれって言うのも面倒だし、言わなければ僕に気づくことすらないだろう。
 僕はなにも言わずに、また教室を出て秘密の場所に向かった。



 空き教室の並ぶ廊下の突き当たり。屋上へと続く校舎の一番端の階段の一番上。
 施錠された屋上には鍵を持った先生が一緒でないと入れないし、わざわざここから屋上に入ることも滅多にない。ここが、僕が見つけた一人きりになれる場所だった。
 屋上へと続くドアから外の光が洩れてきて、それほど暗くもない。僕はそこに座ると、持っていた本を広げた。


 僕は、僕自身が嫌いだった。
 なにをやってもうまくいかないし、ダサいし、カッコよくもない。頭がいいわけでもないし、スポーツができるわけでもない。自分の席を他人にとられて、すごすごと逃げ出すしかできない、何のとりえもない自分。
 先生は、自分を好きになれ、と言ったけれど、こんな自分を好きになれるわけがない。

(たとえば、あのキョウみたいに頭が良ければ、堂々としていられるのに……)

 思い出すのは、前の席の派手な金髪だった。でも、いくら羨ましがったって、僕があんな風になれるわけがない。

(はあ……)

 本を読んでいても、ちっとも内容が頭に入ってこなくて、ため息ばかりが出る。

「……あれー? こんなところで、なにしてるの?」

 急に声をかけれれて、僕は心臓が口から飛び出るほど驚いた。まさか、ここに誰かほかの人が来るだなんて思ってもいなかった。
 階段を上がってきたのは、全然知らない男子生徒だった。
 ミルクティー色のふわふわした髪と、同じような色のそでの長いセーターに、学ランの上着を引っ掛けるように着崩している。肩から下げた学生鞄には、ピンク色の小さなドーナツのキーホルダーが付いていたが、中身はなにも入っていないかのようにペったんこだった。

 彼は、すたすたと僕のすぐ前まで階段を上がってきて、ひょい、と顔を覗き込んでくる。

「ん~? もしかして、泣いてる?」
「なっ、泣いてなんか……」

 ない、と言いたかったけれど、その拍子にぽろっと一滴涙が目から零れ落ちてしまったのでまったく説得力がなかった。
 彼は僕の隣にすとんと腰を下ろすと、カバンの中をがさがさと漁っている。

「な、なんで隣に来るんだよ……、そもそも、君、誰……?」
「ん~? オレは謎の王子様だよ~。はい、お菓子、食べる?」
「いっ、いらない……」
「え、なんで? 美味しいよ?」
「美味しいとか関係ないし……」

 差し出された飴を押し返すと、彼は心底悲しそうな顔をした。
 謎の王子様とか、意味が分からない。そもそも、僕は初対面の人と話をするのが苦手だし、誰も来ないと思ったからお気に入りの場所だったのに、この人にばれてしまったらもうここも使えなくなる。
 いろんなことが頭の中をぐるぐるして、なにをどうしたらいいのか分からない。

「ねえ、一口だけでいいから食べてみてよ。はい、あーん」
「だから、いらな……むぐっ」

 口を開けたスキに、キャンディを無理やり押し込まれた。
 なんとか飲み込まずに済んだが、急に口の中に広がる甘さに僕は目を白黒させる。

「甘いものは、人を幸せにするんだよ」

 言って、彼はカバンを枕にしてごろりと床に寝そべってしまった。僕の隣で。

「ちょ……、制服、汚れるよ……?」
「ん~? 大丈夫大丈夫。オレ、どこでも寝ちゃうからいつもこんなもんだよ」
「そういう問題じゃないし……」
「それより、それ、美味しい?」

 ひょい、と指さされたのは僕の口。……の中のキャンディのことだともちろんすぐにわかった。
 美味しいかと言われれば……まずくは、ないかな。曖昧に頷く。すると彼は嬉しそうにぱああっと笑顔になった。

「ほらね。甘いもの食べてれば、嫌なことも忘れられるよ」


 それから昼休みが終わるまで、僕はそこでずっと読書を続けた。
 寝ている彼の隣で。






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