恋煩い日記
2012年は毎日何かを書こう、という目標のもといろいろな創作をするブログになりました。
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霧島音羽
霧島くんと音羽くんはデビュー前、魁斗と会う二年も前に出会っていたと聞いて。
まだアイドルになると決まったわけでもなく、三人目も決まらないしユニット名もないし、ダンスと歌のレッスンばかりをしていたころからの付き合いともなれば、そりゃあ魁斗も入ってきにくかっただろうなあ、とおもいました。
続きになんとなく書き散らかした二つ。
まだアイドルになると決まったわけでもなく、三人目も決まらないしユニット名もないし、ダンスと歌のレッスンばかりをしていたころからの付き合いともなれば、そりゃあ魁斗も入ってきにくかっただろうなあ、とおもいました。
続きになんとなく書き散らかした二つ。
(家族のようで、家族でない)
「そうしてると、二人は兄弟みたいだね」
ダンスのレッスン中、難しくてどうしてもよくわからないところを霧島くんに図解してもらっていると、それを見ていたらしいスタッフさんになぜか楽しそうに言われ、僕たちは顔を見合わせた。
兄弟? 僕と、霧島くんが。
「霧島くんの方が年上だから、お兄ちゃんかな?」
冗談のつもりで問いかけてみると、霧島くんは苦笑混じりに言った。
「弟がいたことはないから、新鮮だ」
「あら、そうなの? 面倒見がいいから長男タイプだと思ってた」とそれを聞いたスタッフさんが言ってくる。
確かに、霧島くんは真面目で、僕みたいなできの悪いのにも諦めずにずっと根気強く付き合ってくれる。自分は、一度でできてしまう(それは、子どものころからずっとダンスを習っていただけあって、彼のダンスのキレは先生も認めるほどだ)ようなことでも、できない僕のためにこうしてノートまで書いてくれるくらいだ。
「そうですよ。それに、こんなに似ていない弟を持った覚えもない」
「はは。確かに」
家族、そういうのもいいものかもしれない。今ひとつ僕にはぴんとこないけれど。
それに。霧島くんは家族というよりはもっと違うイメージがあるんだ。
「霧島くんはお兄ちゃんっていうよりは、隊長かなあやっぱり」
目の前にいる、金髪眼鏡の顔に向かって言ってみる。
すると、彼は眼鏡の奥の瞳をちょっと揺らして、答える。
「その、隊長というのも俺にはよくわからないんだが」
「うん? ほら、僕を導いてくれる、そんなような意味かな」
糸の切れた風船みたいだった僕に、また新しい糸を結び直して、その端をしっかりと握っていてくれる、それが僕にとっての霧島くんだった。家族、というものに抱くなにか温かそうで柔らかそうなイメージとはまた違う。でも僕にとってもう、それは欠かせないものでもあった。
そのときは、そう思っていたんだよ。まだ、魁斗と君に出会う前には。
(失いたくない)
新曲のイメージができた。
そう言われて、僕は霧島くんの部屋に向かった。それは、新しい曲を受け取ると必ず行う、二人だけのミーティングだ。
既に僕も魁斗も、歌詞とデモテープを受け取っていた。自分なりにその世界を思い浮かべてみるけれど、やはり僕には引き出しが少ない。薄っぺらいだけの世界観では、観客の心を動かすような歌にはできない。だから、このミーティングは僕には必要なものだった。
霧島くんの部屋には何度も入ったことがある。いつ行っても、きちんと片づけられた清潔な部屋。
彼は今夜はベッドに座っていた。
「来たよ」
「ああ、始めよう」
僕は霧島くんの隣に座り、歌詞の書かれた紙をぼんやりと眺める。そこへ、霧島くんが曲のイメージを、ひとつひとつ話し始める。
今回の曲は、今までと違って別れの曲。
今までの曲で出会って、恋に落ちて幸せだった二人が、永遠に別れなければならなくなった。
相手と出会ったことは運命だと思っていた。もう、他の存在などありえない、代わりなどいない、そう思っていたのに、もう会うことはない。
耳に入ってくる霧島くんの声。僕は想像する。
運命の相手。君さえいれば、他に何もいらない。そう聞いて思い浮かぶのは口に出しては言えない顔だった。
霧島くんが一通りの説明を終え、僕がいくつか質問をする。霧島くんは、それに少し考えながら答える。僕は更に少し意見をする。霧島くんはまた少し考え、僕の考えは間違っていないだろうと答える。
「分かった」
僕は答えた。
デモの入ったウォークマンのイヤホンを耳にさし、再生ボタンを押す。
そして、歌う。霧島くんと僕のイメージする、この曲の世界を。
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