一本目

帰宅して、見たいわけじゃないけどなんとなくテレビをつけたらやっていた話題なんですが、なんとなく私は「役者不足」という言葉が好きです。「役不足」じゃなくて。
理由はよくわからない。
あと、この言葉（と意味）を知ったのは結構最近で、ほんの何年か前だったと思う。

……と思ったら、yahooさんの辞書に「役者不足」載ってないなぁ。まぁ、いいか。

それで、こんなことを想像した。

（羽ヶ崎学園の生徒会室にて）


「……それでは、この議題についてはこの案で決定ということで」
「異議なーし」
「では引き続き担当者について確認していきたいと思います」
「それは、発案者の○○くんが担当するのが妥当ではないでしょうか」
「そうですね。では総責任者は○○くんということで……」

羽ヶ崎、はばたき両校の生徒会の交流会も何度か回数を重ねてきて、いろんな意見が出るようになってきた。来月に行う予定の交流会については、羽ヶ崎学園の彼が発案した案で決定ということになった。
今回は自分に何か担当が回ってくることはなさそうだ、赤城はそう思って少し安心し、横目で窓の外を見上げた。四角く切り取られた空は少しずつオレンジ色に染まっている。
今日はあの子に会えなかったな、せっかくはね学にきたのに。赤城は少し残念に思った。

ぼんやりしている間に前の黒板には決定された担当の役と担当者の名前が書き加えられていた。
自分の名前がないことに安心して、それからもう一度それを眺めて確認してから、赤城はさっと手を挙げた。

「あのさ。個人的な意見なんだけど」

その場にいるメンバーが一様に赤城に注目する。この空気があまり好きではない。何かまともなことを言わなければならないというようなプレッシャーが。

「はね学の発案だから、はね学のメンバーが中心になってもいいと思う。だからそれに異議はないけれど、氷上くんの担当はどう見ても役不足じゃないだろうか。再考を提案するよ」

赤城の発言に対する反応は、驚いたようにポカンとするものが7割、なにを言っているのか分からないというような顔をするのが1割、言われてみれば、と納得するものが2割といったところだった。
発言し終わって席に座りなおした赤城に、隣に座っていたはば学の生徒が小声で耳打ちしてくる。

「赤城、それは氷上くんに対して失礼じゃ……」
「え？　どうして？」
「だって、氷上くんじゃあの役はできないって言いたいってことだよな？」
「……は？」

驚いて赤城は聞き返す。赤城が意図していた発言の意味と正反対に解釈されてしまっている。

「えぇと……もしかして、役不足の意味、間違って覚えてる？」

慌てて本来の意味を説明すると、彼はようやく納得したようにうなずいた。赤城はため息交じりに最後にこう付け足していた。

「氷上くん本人が誤解していないのはもちろん、隣の小野田さんもそうだそうだ、って言いたそうにうなずいていたよ。はば学の代表として恥ずかしいから、もう少し勉強してくれよ」
「……ほんと、お前ってそういうところがなかったらいい奴だと思うんだけどな」
「別に君にいい奴と思われなくても構わないけれど」

念のため、と付け加えて赤城はもう一度手を挙げた。
国語の勉強をこんなところでするとは思わなかった、と内心ため息をつきながら。

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あれ？　意味もなく長くなってしまった。
「その役は氷上くんには役不足だ」＝氷上くんにやらせるには失礼なほど簡単すぎる仕事だ、といいたかったということです。

しかし正しい日本語＝みんなが使っている日本語　だとすると、この言葉の意味も変わってくるのかもしれない。自分自身間違って覚えてたり、違うふうに解釈している言葉がたくさんあるし。