ちがうちがう、そうじゃなくて！

小悪魔蓮見バンビ。

小悪魔というか、なんか感じ悪いバンビになってしまったので、天使バンビじゃないとダメだ！って方はみないでくだしあ。
バンビにもこんな側面があるなんて、プレミアムで初めて知った。

◆蓮見バンビ。　小悪魔ver.




「ふぅ。なかなか面白かったね。今まで大衆向け大ヒット映画なんて、見る価値がないと思っていたけれどなかなかどうして……」

ボクは部屋の明かりをつけるためにたちあがった。今まで一心不乱に画面を見続けていたので少々身体が痛い。
部屋に蛍光灯がつくのと同時にボクはひとつ伸びをして、彼女が座っていたはずのほうを眺め……

ギョッとして伸びでほぐれたはずの筋肉がまた固まるのを感じた。

枕を抱えた彼女がふてくされた顔をしてボクのことを睨んでいたからだ。

「ど……どうしたの？　映画、面白くなかった？」
「ぜーんぜん」
「えっ……だ、だって。君が見たいって言ったんじゃないか。ボクの好きな映画は分からないから、売れてるのが見たいって……」
「だって面白くないものは面白くなかったもの」
「…………」

（ソンナコトイワレテモ……）不機嫌MAXの彼女の表情に、冷汗がだらりと背中を伝う。
こ、怖い怖い怖い。
正直言って、今のボクは彼女に嫌われることが一番恐ろしい。人生18年目にしてようやく始まったボクの物語の主人公は、ボクじゃなくて彼女なんじゃないかという気がしてくるほど、今のボクにとって彼女なしの生活など考えられない。
……にしては、結構嫌われてる、というかデートの度にいろいろ言われてるような気がするけど……でもこうしてボクの家でデートを繰り返すくらいの仲にはなっていることだし、嫌われてはいない……と、思う。……たぶん。

「ご、ごめんね？」

とりあえず、謝ってみる。

「なにに謝ってるの？」

案の定、それだけでは許してくれない。

「えぇと……つまらない映画を……見せてしまって？」

探り探り、答えてみる。

「そう。蓮見くんは、そこが悪かったと思ってるんだ。はーぁ」

ため息。
え……？　え？　全然分からない。彼女がなんで怒ってるのか、なにが気に入らないのか全然わからない。

……分からないときは……聞いてみるに限る。

「あの、さ。君がどうして怒っているのか、分からなくてごめん。　だから……教えてほしいんだけど」

なんとなく。彼女の前に正座してみる。我ながら情けないとは思うよ。
だけど、仕方ない。ボクは（今のところ）彼女の王子様じゃないんだから。カッコ悪くても仕方ない。

すると、彼女は枕をボクに投げつけてきた。うわっ、と言いながらそれを受け止める。

のと同時に。今度は彼女自身がのしかかってきた。慌てて枕を放り投げて受け止める。

「わっ……と、あぶないじゃない」
「…………もん」
「へっ？　なに？」
「蓮見くんが構ってくれなかったから、全然面白くなかったんだもん！」
「わっ！　み、耳痛い……！！」

耳元で大きな声出さないで……。じゃなくて、なんだかとんでもないことを聞いた気がする。
衝撃が強すぎて、あまりよく覚えてないんだけど……でも聞き返したりしたら、余計に怒りそうな気もする。

……こういうときは……。


ぎゅっと首にまわされた彼女の腕の力を感じながら、ぽんぽんと彼女の背中を優しくなでた。

「ごめんね。ボク、つい映画に夢中になっちゃって」
「そうだよ。蓮見くんは、わたしのことだけ見てればいいの」
「はい……あ、うん。そうだね。気をつけるね」
「しかもそれに気がつかないなんて、最悪だよ」
「そうだね。ごめんね」
「謝れば済むと思ってるでしょ」
「そうじゃないけど。……でもごめん」
「ばか。……でも、……すき」

たまらなくなって、僕は彼女を抱く腕に力を入れた。
多分、また「強すぎ」って怒られちゃうけど、でも、こればっかりは我慢できない。

「ボクもだ」














予想以上に甘くなった。